お前は妻として、あの子は恋人として愛してる。モラハラ夫の不妊治療中の裏切りから自分を取り戻せるのか【書評】
公開日:2026/1/24

信じていたパートナーに裏切られたと知ったとき、あなたはどうするだろうか。離婚という選択肢が頭をよぎる人もいれば、すぐには決断せず、しばらく距離を置く時間を持とうとする人もいるだろう。とはいえ、怒りや悲しみの感情が渦巻く中で冷静さを保つのは容易なことではないはずだ。
『夫のメンヘラ不倫相手がとんでもない爆弾でした』(ママ探偵:原案、善哉あん:漫画/KADOKAWA)は、そんなつらい局面に置かれた人に寄り添う物語である。
主人公・サナエは子どもを授かりたい一心で不妊治療に励む専業主婦。しかしある日、彼女は出張帰りの夫の荷物から、不貞行為を示す決定的な証拠を発見してしまう。感情のままに問い詰めると、夫は逆ギレし、驚愕の言葉を口にした。「お前は妻として、あの子は恋人として、それぞれ愛してるんだから……。俺を見守ってほしい」。
巧妙な言葉で反論を封じる夫に、サナエはしだいに正常な判断力を失っていく。いつしか夫の不倫を受け入れるしかないと思い込むように……。心が壊れかけるなか、サナエは意を決して探偵事務所のドアを叩く。
本作の見どころは、夫による心の支配から抜け出し、再び自分の人生を取り戻していく主人公の心の変化が緻密に描かれているところだ。不倫やモラハラ、DVといった問題を抱える人の中には、サナエのように「自分が悪いのではないか」と思い込み、誰にも相談できずに孤立してしまう人も少なくない。しかし、それこそが加害者の思うつぼなのだ。被害者を孤立させ、判断力を奪い、支配を強めていく。それがモラハラやDVの典型的な構造である。
この悪循環から抜け出すためには、自分ひとりで抱え込まず、信頼できる友人や専門家に相談することが何より大切である。本作は主人公の姿を通して、歪んだ関係を客観的に見直すために第三者の視点を得る重要性を伝えている。主人公と同じような状況に苦しむ人にも手に取ってほしい作品だ。
