母の妊娠から知る家族の禁忌と裏切り。15歳年上の夫の不倫相手は私の母でした【書評】

マンガ

公開日:2026/1/25

43歳の母を妊娠させたのは私の夫でした』(サレ妻くるみ:原案、きなりみや:漫画/KADOKAWA)は、タイトルからして常識を揺さぶるような衝撃の展開を予感させるが、その想像をはるかに超える“家族崩壊のリアル”を鮮烈に描き出す問題作だ。

 主人公・くるみは、15歳年上の夫とお見合い結婚し、穏やかで安定した結婚生活を送っていた。そんな日常が突然崩れる。そのきっかけは母の家を訪ねたときのこと。ふと目に入ったのは“陽性反応の妊娠検査薬”だった。単身赴任中の父が相手とは考えられない状況に問い詰めても、母は動揺しながら曖昧な言葉を返すばかり。小さな違和感から、くるみは真実を探ることに。そこで明らかになるのは、誰にも予想できず、そして決して受け入れられない家族の裏切りだった。

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 最愛の夫と、育ててくれた母——人生で最も信じているはずの2人が、越えてはならない一線を踏み越えていたとしたら。想像しただけで胸が締めつけられ、呼吸が苦しくなる絶望が押し寄せる。本作は、そんな「目を背けたくなる現実」を、単なるスキャンダルとしてではなく、人間ドラマとして丹念に描き出している。裏切られたくるみの心は傷つき、家族の関係は崩壊していく。そして加害者となった2人の言い訳や葛藤までもが克明に表現され、読者は知らず知らずのうちに感情を揺さぶられていく。

 物語を読み進めるほど、「自分ならどうするだろう」という問いが胸に突きつけられる。禁忌を犯してしまった2人はどんな結末を迎えるのか。それを見届けようとする読者の手は、最後のページまで止まらない。

 衝撃的なテーマを扱いながらも、「信じていた人に裏切られるとはどういうことか」という普遍的な問いを痛烈に突きつける本作は、ただのトラブル漫画では終わらない。緊張と破綻が連続する物語の中に、人間の弱さや愚かさ、そしてそれでも前に進もうとする主人公の姿が描かれ、読後には深い余韻と重たい現実が残る一冊である。

文=ネゴト / すずかん

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