「リコンだ」が口癖の無職夫が本当に出て行った。10年間振り回された妻が最後に手にした“自由”【書評】
公開日:2026/1/30

3度目の無職期間に入った夫が、妻と幼い息子を残して突然家を出ていく。『無職の夫に捨てられました』(黒田カナコ/KADOKAWA)は、そんな“自分勝手な無職夫”に振り回され続けた妻が、共依存の鎖を断ち切り、自分の人生を取り戻していく姿を描いたコミックエッセイだ。
主人公の夫は仕事が続かず、口を開けば「もう辞めたい」の弱音ばかり。仕事を辞めたら辞めたでゲーム三昧で、再就職する気配はまったくない。貯金を切り崩して支える妻がそばにいても、夫は家族より自分を優先し、ケンカのたびに「リコンだ」と家を飛び出していく――その身勝手さには呆れるほかない。それでも別れを選べず、共依存のような関係を続けてきた主人公。
疲弊しながらも、夫婦バトルを繰り返してきたある日、体調を崩して寝込む妻に向かって、夫は唐突に「リコンして」と告げる。しかも今回は勢い任せの口癖ではなく、すでに隣県で新しい家と仕事を決めてきていたというのだ。10年続いた結婚生活、さらに子どももいるにもかかわらず、まるで単身赴任にでも行くかのように「明後日には出ていく」と宣言する。そして、荷物をまとめて本当に家を出ていってしまう。その無責任さには、読者も思わず絶句してしまうだろう。
本作はそんな夫に翻弄され続けた主人公が、“自分の人生”を取り戻していく過程を描いている。苦しみながらも夫にしがみついていた彼女が、ついに離婚を受け入れ、完全に愛想を尽かす瞬間が描かれる。そして、息子と二人で新たな生活を築いていく姿は、切なさの奥に確かな爽快感をもたらしてくれる。
著者の黒田カナコさん自身が一人息子を抱えて離婚した経験者であることも、本作の説得力を高めている。共依存から抜け出すまでの葛藤や揺れ動く感情、決断の苦しさが実体験に基づいて丁寧に描かれており、読者は主人公の気持ちに深く寄り添うことができる。無職の夫に捨てられたその先で主人公が見つけた“自由”と“再生”。その姿はきっと、あなたの心にも静かな勇気と前向きな力をもたらしてくれるだろう。
