多額の借金の背景にあるのは宗教とマルチ商法。止まらぬ信仰が奪った家族の末路【書評】

マンガ

公開日:2026/2/4

長年家族だと思っていた母は知らない人でした 家族を破滅と崩壊へ導いた、母の信仰心』(ジジ&ピンチ:著、えみこ:原作/KADOKAWA)は、そのタイトルが示すとおり、“母”というもっとも近しい存在が、家族の知らない別の顔を抱えていたという痛恨の真実から幕を開ける。

 実家へ戻った主人公・翔子は、父から衝撃の告白を受ける。優しく穏やかで、倹約家だと信じて疑わなかった母が、父の退職金2,000万円を使い込み、さらに祖母に1,000万円もの借金をしていた。裏では消費者金融にも手を出し、“健康食品・化粧品販売”という名のマルチ商法にのめり込み、多額の負債を抱えていた母。

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 「お母さん…あんなにやさしかったのに。今までのは全部うそだったの?」という言葉に、変貌を受け入れられない主人公の心情がよく表れている。母が積み上げてきた“優しい母親像”が音を立てて崩れていく瞬間、そこにあるのは裏切りや怒りだけではない。“なぜこんなことに……”というやるせなさが、静かに心を締めつけていく。

 物語が進むにつれ、母の背後には“宗教”の影が見え隠れする。押し入れから現れる水晶や経典のような本。ついには母が結婚前から宗教団体に入信していた事実が明らかになる。知らなかった真実を突きつけられ、家族の悲しみはさらに深まる。問い詰めれば逆ギレし、「仕事が生きがい」と語る母の姿には、かつての温かさはすでに失われている。「もしかしたら目を覚ましてくれるかもしれない」そんな淡い希望にすがり、家族は必死に母を救おうと手を差し伸べる。そのひたむきさが、かえって読者の胸を切なく締めつける。

 だが現実は容赦ない。母は家族の願いよりも、宗教とマルチ商法への執着を優先し、呼びかけのすべてを跳ね除けていく。大量の商品在庫、繰り返される金銭の無心。その異様な執着が、家族から“母という存在”をゆっくりと、しかし確実に奪っていく。その様子は読む者の息を詰まらせるほど生々しい。

 読者は翔子や妹とともに、母という存在の崩壊と、その奥に広がる深い闇を見届けることになる。家族の愛情だけでは救えない現実がある——その残酷さと真実を、ぜひその目で確かめてほしい。

文=ネゴト / すずかん

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