「管理ではなくコミュニケーションを」子どもが性被害に遭わないため親がすべきなのは?【監修者インタビュー】

マンガ

公開日:2026/1/29

 性的接触を目的に未成年者をはじめとした児童に接近し、信頼関係を利用してコントロール下におく“チャイルドグルーミング”(以下、グルーミング)。信頼関係を築いた上で性加害を行うため、子どもの抵抗感を失わせ、それが性暴力であることすらわからないように加害を行うのが特徴だ。近年、聞かれるようになったこの言葉をテーマに描いた漫画が『娘をグルーミングする先生』(のむ吉:著、斉藤章佳 西川口榎本クリニック副院長(精神保健福祉士・社会福祉士):監修/KADOKAWA)だ。

 主人公の佐倉真美は女手ひとつで子どもを育てるワーキングマザー。高校1年生の娘・小春の成績が落ちていることに愕然とし、塾を探すことに。小春が通うことになった塾の塾長・森先生はとても真面目そうな人。森先生のおかげで小春の成績も次第に上がっていきすっかり安心していた真美だが、ある日小春から「ママに会わせたい人がいる」との言葉が。交際相手として連れてきたのはなんと森先生。森先生との交際を反対する真美だったが、小春は聞く耳を持たず……。

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 本作の監修をした西川口榎本クリニック副院長で精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳(あきよし)先生に、グルーミングについて話を聞いた。

――本作を読んで、自分の子どもが被害者にならないようにどうしたらいいかと考える保護者の方がすごく多いと思います。

斉藤章佳さん(以下、斉藤):SNSに触れる年齢になると特に、親が全く知らないところでどんどん子どもの世界が広がっていきます。しかも管理されればされるほど、子どもは親にバレないようにと抜け道を探します。フィルターやロックをいくらかけても、解除の方法を考えたりネットで探したり。だから管理はいたちごっこで限界があるんですよね。だから一番は、コミュニケーションの量を増やすことです。特に何気ない「雑談」の中で早めにサインに気づくことが重要です。

――あまり先回りしすぎても良くないということですね。

斉藤:もちろん、グルーミングのパターンや、オンラインで不特定多数の人とつながるリスクも伝えておくことは大事です。でも子どもは「やっちゃいけない」と言われていることを突破して自分の世界を作っていくし、秘密のポケットを作ることで親から自立していきます

 保護者が子どもの前にある障害を先回りして取り除くことを「カーリング子育て」といいますが、これは子育ての本質として少し違うと思うんです。「死なない程度にどう失敗させるのか」ということが教育だとすると、痛みを先回りして取り除くことが教育ではありません。もちろん性被害を受ける手前でちゃんと危ないと気づいて、それを教育の機会にしていくのが、子どもが育っていく中でも大事なことだと思います。

――作中で母である真美が小春と森の交際を反対した時、小春は母のことをシャットアウトしてしまいます。これはグルーミング被害者によくある反応なのでしょうか?

斉藤:そうですね。典型的なケースだと、グルーミングによって被害を受けた場合、親が被害届を出そうとするのですが、それを被害者である子どもが止めるということがあります。「あの人は悪くない、私のことを一番よくわかってくれているんだ」と。性被害を受けているのにもかかわらず、親に「警察に言わないでほしい」と言うことがあるんです。これは完全にグルーミングのマインドコントロールの結果です。

――そんな時、親はどういう対応をすればよいのでしょうか。

斉藤:難しいですよね、正論を言っても反発するだけですし。まずは、起こり得るリスクをきちんと伝えるのが大切です。そしてもし困った状態に陥った場合、こちらはちゃんと手助けする準備があるということを、問題が起きる前から伝えておくことが大切かなと思います。

取材・文=原智香

斉藤章佳:
1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症施設「榎本クリニック」にソーシャルワーカーとして勤務。現在、西川口榎本クリニックの副院長。25年に渡り、アルコール依存症、ギャンブル、薬物、摂食障害、性犯罪、児童虐待、DV、クレプトマニアなどさまざまなアディクション(依存症)問題に携わる。専門は加害者臨床で、3500人以上の性犯罪者の再犯防止プログラムに携わる。著書に『「小児性愛」という病-それは、愛ではない』(ブックマン社)、『子どもへの性加害-性的グルーミングとは何か』(幻冬社新書)、『夫が痴漢で逮捕されました-性犯罪と「加害者家族」』(朝日新書)などがある。

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