性加害者になってしまった人の特徴は? 子どもを性加害者にしないために必要な教育とは【監修者インタビュー】

マンガ

公開日:2026/1/30

 性的接触を目的に未成年者をはじめとした児童に接近し、信頼関係を利用してコントロール下におく“チャイルドグルーミング”(以下、グルーミング)。信頼関係を築いた上で性加害を行うため、子どもの抵抗感を失わせ、それが性暴力であることすらわからないように加害を行うのが特徴だ。近年、聞かれるようになったこの言葉をテーマに描いた漫画が『娘をグルーミングする先生』(のむ吉:著、斉藤章佳 西川口榎本クリニック副院長(精神保健福祉士・社会福祉士):監修/KADOKAWA)だ。

 主人公の佐倉真美は女手ひとつで子どもを育てるワーキングマザー。高校1年生の娘・小春の成績が落ちていることに愕然とし、塾を探すことに。小春が通うことになった塾の塾長・森先生はとても真面目そうな人。森先生のおかげで小春の成績も次第に上がっていきすっかり安心していた真美だが、ある日小春から「ママに会わせたい人がいる」との言葉が。交際相手として連れてきたのはなんと森先生。森先生との交際を反対する真美だったが、小春は聞く耳を持たず……。

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 本作の監修をした西川口榎本クリニック副院長で精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳(あきよし)先生に、グルーミングについて話を聞いた。

――子育てをしている中で、自分の子どもが性被害を受けないことも大事ですが、性加害をする側にならないようにしていくことも大事ですよね。加害者にならないため、どう育てていけばいいでしょうか?

斉藤章佳さん(以下、斉藤):これは講演会で男の子を育てる親から一番よく受ける質問ですね。例えば盗撮や痴漢をした犯人のデータを見ると、大卒で自身が家庭を持っている会社員が圧倒的に多いです。つまりいわゆる“普通の男性”です。過酷な生育歴だったかというとそういうわけでもない。

 そもそも彼らは生まれた時から性犯罪者だったわけではないですよね。この社会の中で性犯罪者になったわけです。つまり本人個人の問題だけではなく、彼らを取り巻く環境や学んだ価値観が問題なんです。価値観を学ぶ場所は主に4つあります。家庭、学校、メディア、そして社会です。この4つでいかにジェンダー平等や性的同意のことも含め、包括的な性教育に取り組んでいけるかが大事だと思います。家庭から生まれる価値観としてお父さんとお母さんのやり取りが男女間のコミュニケーションのロールモデルになるので、本質的には夫婦関係が大切になります。

――グルーミングからは少し離れますが、小児性愛障害の場合また違った問題があったりしますか?

斉藤:小児性愛障害の場合、海外には子どもへの性嗜好を自覚した時に相談する公的機関や民間の機関があります。これはすごく大事なことです。例えば、子どもに対する性嗜好を生まれながら持ってしまう人は一定数います。その時点で彼らを責められるのかというと難しいですよね。多くの小児性愛障害者は生まれてから一度も加害行動を起こさない人の方が圧倒的に多いですから。

 ただ子どもに対して性嗜好を持っている方は社会で孤立しやすいので、そういう人が相談できる機関やつながれる場所が日本には必要だなと感じています。小児性愛障害だけではなく、性的な嗜好について身近に相談できる人自体が非常に少ないのが日本の現状なので、そこは改善されていったらと思いますね。

 また、私が勤める西川口榎本クリニックには10代で性加害をしてしまった少年が患者として来ているのですが、その対象者286名のデータを取ったことがあるんです。その子たちが最初に性的な問題行動を行った年齢の平均は9.6歳でした。さらに一般的な規範から逸脱した性的な情報に初めて触れた年齢は6.5歳でした。今はタブレットを幼稚園くらいから使いこなせる時代ですから、この数字がもっと下がることも考えられます。

 ユネスコが出している国際セクシュアリティ教育ガイダンスには包括的性教育は5歳から年齢や発達段階に応じてスパイラルに行うことになっていて、5歳の段階で身につけないといけない知識・スキル・態度もしっかり書いてあります。先ほどのデータを考えると、5歳ぐらいから性教育を行うのは本当に妥当なんだろうなと思います。

取材・文=原智香

斉藤章佳:
1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症施設「榎本クリニック」にソーシャルワーカーとして勤務。現在、西川口榎本クリニックの副院長。25年に渡り、アルコール依存症、ギャンブル、薬物、摂食障害、性犯罪、児童虐待、DV、クレプトマニアなどさまざまなアディクション(依存症)問題に携わる。専門は加害者臨床で、3500人以上の性犯罪者の再犯防止プログラムに携わる。著書に『「小児性愛」という病-それは、愛ではない』(ブックマン社)、『子どもへの性加害-性的グルーミングとは何か』(幻冬社新書)、『夫が痴漢で逮捕されました-性犯罪と「加害者家族」』(朝日新書)などがある。

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