自己肯定感が低い、孤独を感じている…。グルーミング加害者に狙われやすい子どもの特徴とは【著者インタビュー】
公開日:2026/2/1

性的接触を目的に未成年者をはじめとした児童に接近し、信頼関係を利用してコントロール下におく“チャイルドグルーミング”(以下、グルーミング)。信頼関係を築いた上で性加害を行うため、子どもの抵抗感を失わせ、それが性暴力であることすらわからないように加害を行うのが特徴だ。近年、聞かれるようになったこの言葉をテーマに描いた漫画が 『娘をグルーミングする先生』(のむ吉:著、斉藤章佳 西川口榎本クリニック副院長(精神保健福祉士・社会福祉士):監修/KADOKAWA)だ。
主人公の佐倉真美は女手ひとつで子どもを育てるワーキングマザー。高校1年生の娘・小春の成績が落ちていることに愕然とし、塾を探すことに。小春が通うことになった塾の塾長・森先生はとても真面目そうな人。森先生のおかげで小春の成績も次第に上がっていきすっかり安心していた真美だが、ある日小春から「ママに会わせたい人がいる」との言葉が。交際相手として連れてきたのはなんと森先生。森先生との交際を反対する真美だったが、小春は聞く耳を持たず……。
“チャイルドグルーミング”について入念に調べてから本作を描いたというのむ吉さんに、本作を描こうと思ったきっかけや込めた思いを聞いた。
――グルーミング被害者となる佐倉家は母子家庭です。お母さんは忙しく、子どもの話を聞く時間がない…という描写があります。この設定はどのようにして考えられたのでしょうか?
のむ吉さん(以下、のむ吉):グルーミング加害者に狙われやすい子どもの特徴を踏まえてこの設定にしました。グルーミングには「5つのプロセス」があって作中でも解説していますが、一つ目は手懐けるターゲットを選別することなんです。選別されやすい子どもの特徴としては、家庭環境が複雑であったり、父親や母親の存在が近くになかったり、自己肯定感が低く孤独感を感じていることが挙げられています。なので、もちろんそうではない家庭もありますが、母子家庭で親の目が不十分である設定にしました。
――「5つのプロセス」について教えてください。
のむ吉:ターゲットの選別がされたあと、加害者は自分だけがターゲットの味方であると振る舞い、友人や家族から孤立させます。そして子どもに寄り添っていくことで信頼関係を強めるんです。そして、子どもは加害者に対して信頼感や恋愛感情を抱くようになります。マッサージやくすぐりなど、一見性的に見えない身体的接触を通じて、性的な刺激になれさせ、最終的には子どもが被害を口外しないように「愛している」「2人だけの秘密」という言葉をかけて、関係を継続しようとしていきます。
――被害に遭う小春はどんな子どもにしようと考えて描きましたか?
のむ吉:他者が入り込む隙のある子どもにしようと考えました。小春は本来子どもらしく過ごせるはずの期間に大人の顔色をうかがい過ごします。結果、大人の手を煩わせない「いい子」のように見えますが、それは小春が自分の気持ちを抑圧しているからです。小春にはアダルトチルドレン(子ども時代のトラウマや家庭の問題、親の不適切な行動などに起因して、成人してもその影響を持続的に感じる人々)としての側面もあると想定し描きました。そのため自分のことを表現したり、人とわかり合ったりすることが苦手です。寂しくても誰にも言えない、だけど誰かにわかってほしいといった心の隙を加害者である森に狙われます。
――小春のお母さんは小春を最優先で考えているのに、小春にはそれが伝わりません。これはどの家庭にも多かれ少なかれあると思うのですが、このお母さんはどんな人物像を思い描いて生まれましたか?
のむ吉:小春と塾講師の森に翻弄される、少し余裕のない母親を想定して描きました。母・真美は親に認められず、夫にも裏切られ悔しい思いをしてきました。小春にはそんな思いをさせたくないという気持ちが強く、小春を立派な大人に育てるために忙しく働きます。表向きでは「小春のため」といいますが、根底には真美自身の、親や夫を見返したい、世間から馬鹿にされたくないという気持ちがあります。それゆえ、小春がだらけているように見えると、自分が否定されるのではと不安になり小春にきつく当たってしまいます。それでも小春が一番大切なことには間違いないのですが、それが小春には伝わっていないので親子間ですれ違いが生じてしまいます。
取材・文=原智香
