ターゲットの“唯一の味方”として共感し、手懐けていく…。チャイルドグルーミング加害者の行動パターンとは?【著者インタビュー】
公開日:2026/2/4

性的接触を目的に未成年者をはじめとした児童に接近し、信頼関係を利用してコントロール下におく“チャイルドグルーミング”(以下、グルーミング)。信頼関係を築いた上で性加害を行うため、子どもの抵抗感を失わせ、それが性暴力であることすらわからないように加害を行うのが特徴だ。近年、聞かれるようになったこの言葉をテーマに描いた漫画が 『娘をグルーミングする先生』(のむ吉:著、斉藤章佳 西川口榎本クリニック副院長(精神保健福祉士・社会福祉士):監修/KADOKAWA)だ。
主人公の佐倉真美は女手ひとつで子どもを育てるワーキングマザー。高校1年生の娘・小春の成績が落ちていることに愕然とし、塾を探すことに。小春が通うことになった塾の塾長・森先生はとても真面目そうな人。森先生のおかげで小春の成績も次第に上がっていきすっかり安心していた真美だが、ある日小春から「ママに会わせたい人がいる」との言葉が。交際相手として連れてきたのはなんと森先生。森先生との交際を反対する真美だったが、小春は聞く耳を持たず……。
“チャイルドグルーミング”について入念に調べてから本作を描いたというのむ吉さんに、本作を描こうと思ったきっかけや込めた思いを聞いた。
――グルーミング被害を受ける小春は父にも母にも祖母にも遠慮して、孤独を感じながら育ってきたという描写があります。
のむ吉さん(以下、のむ吉):グルーミング加害者に狙われやすい子どもの特徴として、自尊心が低く孤独を感じている子が挙げられています。それを踏まえ、小春の生い立ちや背景を考えていきました。
――そんな環境の中、小春は「森先生なら私の気持ちをわかってくれるかも」と考えます。これは被害者に多くある感情なのでしょうか?
のむ吉:小春は小学生の頃に森と出会っています。その頃も森は小春の話を熱心に聞き、孤独に寄り添っていました。グルーミングの意図など知らない小春にとって森は、ずっと味方でいてくれた“優しい先生”なのです。だから再会した時に「また自分の気持ちをわかってくれるのでは」と期待をしてしまいます。
グルーミング加害者は子どもと信頼関係を築くために、子どもの話に熱心に耳を傾け受容し、共感します。それによって子どもは加害者を唯一の味方であるように錯覚していきます。なので、グルーミング被害に遭っている子どもに多くある感情だと思います。
――森について、小春が「周囲から慕われているんだな」と考える場面があります。ここはどのような意図で書いたシーンですか?
のむ吉:森が塾というコミュニティを手懐けている表現をしたくて描きました。グルーミング加害者はターゲットに近づくために、まずは地域社会やターゲット周辺のコミュニティを手懐けていきます。森からするとグルーミングの手口の一つなのですが、小春から見るとみんなから信頼されている人気者の先生として映ります。これによって小春の森に対する警戒心は解かれ、森に対する好感度も上がっていきます。こういった些細に見えることの中にも、グルーミングの意図は滲んでいるということを伝えたかったんです。
――距離を詰めてくる森について、小春は嫌悪を感じずむしろときめきを感じていきます。この心情はどのように描きましたか?
のむ吉:小春は恋愛経験がなく、また他者との適切な距離感を教えてくれる大人も身近にはいなかったため、森の異常さに気づけませんでした。森が「これは普通のことだよ」と言えば素直にそれを信じてしまいます。
小春にとって森への感情は恋愛的な要素より、自分を認めてくれる嬉しさや、安心感のほうが大きかったと思います。今後も先生の特別でいる手段として、結婚し家族となることを夢見ていました。恋愛をしたいというよりは、温かい家庭がほしいという小春の心情を意識して描きました。
取材・文=原智香
