このまま流されてしまいたい… 夫との関係に悩む妻がコンビニで出会ったのは―― ときめきと不安、期待と罪悪感に揺れる女性を繊細に描いた1冊【書評】

マンガ

公開日:2026/2/14

夫がいても誰かを好きになっていいですか? コンビニで見つけた私の恋』(ただっち/KADOKAWA)は、「不倫」という一言では決して片づけられない、既婚女性の心の揺らぎを切実に描いた作品だ。

 舞台はコンビニ。あまりにも日常的で、誰にとっても身近な場所で始まる出会いは、だからこそ強い現実味を帯び、読み手の心にすっと入り込んでくる。何気ない会話や、ふと交わされる視線。その小さな積み重ねが、気づけば“非日常”へと変わっていく過程に、否応なくドキドキさせられる。

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 主人公のナツは、子どもを望みながらも夫婦関係はレスとなり、年齢的な焦りと孤独を抱えている女性だ。不倫は決して肯定されるものではない。けれど本作は、善悪のジャッジを押しつけるのではなく、「彼女がなぜ心を奪われてしまったのか」を丁寧に描いていく。その視線があるからこそ、読者は葛藤しながらも、主人公の選択を頭ごなしに否定できなくなる。

 コンビニ店員のツカサくんは、不器用でクール、口数は少ないものの、その分行動やさりげない気遣いでナツを思いやる優しさを持った青年だ。言葉にせずとも相手の気持ちを察し、静かに寄り添う繊細さが印象的である。一方、夫のヒロキは自己中心的で上から目線の物言いが目立ち、セックスレスで悩むナツの心に真正面から向き合おうとしない。その対比があるからこそ、自分を大切に思い、丁寧に接してくれるツカサにナツが惹かれていく過程には、強い共感を覚えずにはいられない。

 34歳のナツと25歳のコンビニ店員という年の差、既婚者と独身という関係、そして失うものの大きさ――リスクだらけの“許されない恋”であることは間違いない。それでも、この恋が彼女にとって自分自身を取り戻すきっかけになっているようにも見え、「もしかしたら、この出会いは間違いではなかったのかもしれない」と思わせるだけの説得力がある。

 ときめきと不安、期待と罪悪感。そのすべてを抱えながら前に進もうとする主人公の姿は、既婚・未婚を問わず、多くの女性の心に刺さるはずだ。日常のすぐ隣にある恋の危うさと切なさを、静かな筆致で描いた、読後に余韻の残るセミフィクションコミックである。

文=ネゴト / すずかん

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