無邪気な笑顔で食卓を囲むこの女の正体は? 夫が連れてきた「地雷女」に妻の幸せが侵食されていく恐怖を描いた衝撃作【書評】
公開日:2026/2/14

長い妊活の末に子どもを授かり、今後の幸せな家族を思い描く主人公・七緒。しかし育児の疲れから、夫・大輝を拒むようになってしまう。そんななか、大輝は10歳以上年下の部下・桜を家に招き、家族で夕食をともにするようになる。頻繁に訪れてくる桜の存在が、七緒と大輝の関係に少しずつ亀裂を生んでいく……。『うちにご飯を食べにくる地雷女 夫の浮気相手でした』(しんどうなつこ/KADOKAWA)は、安らかな日常がじわじわと崩れていく様子を描いた衝撃作だ。
大輝の優しさに支えられ、穏やかな日常を築いていく七緒の姿は幸せそのものだ。ところが、昇進をきっかけに大輝は仕事で帰りが遅くなることが増え、七緒のワンオペ育児が当たり前になっていく。それでもひとり暮らしの桜を気遣って自宅に招き続ける大輝に対して、七緒も当初は理解を見せていた。
しかし桜は最初こそ無邪気で人懐っこく子どもたちとも接しているが、次第に大輝への態度や距離感が変わっていく。手料理への文句や、大輝への馴れ馴れしい態度といった違和感が積み重なっていき、七緒の中で抱いていた不安が少しずつ大きくなっていく。それにしても、桜の態度に「若いから」「部下だから」「家族ぐるみの付き合いだから」と七緒がなんとか理由をつけて受け入れてしまう姿には、物事を都合よく解釈したくなる気持ちが痛いほどよくわかり、妙なリアルさがある。
恐ろしいのは、桜が七緒に対して敵意むき出しではなく、好意的に近づいてくるところだ。浮気の疑いが強まるほどに、表向きは親しげに振る舞う桜の存在感が不気味だ。やがて明らかになる大輝と桜の関係に、七緒がどのような選択をするのか。最後まで目が離せない。
文=ちゃむ
