「育休を取って支える」はウソだった…ただ長期休暇を満喫する夫の「とるだけ育休」に絶望。制度の進歩と現実の乖離を鋭くえぐる【書評】
公開日:2026/2/7

『とるだけ育休の夫はいらない』(リアコミ:原作、しろいぬしろ:漫画/KADOKAWA)は、「育休を取る」という行為が必ずしも家庭の助けにはならないという悲しい現実を描いた作品である。
「俺、育休とるよ。梨香子を支えたい」第二子出産後、産後うつ寸前まで追い詰められた妻の梨香子に、夫の弘明がそんな言葉をかけた様子は、一見すると理想の夫婦だ。しかし、実際に始まった育休生活で弘明がしているのは、家事でも育児でもなく、スマホをいじり、食べて寝て、ただ長期休暇を満喫することだけだった。さらに、子どもを危険にさらすような行動を取る弘明に、梨香子は次第に不満を募らせる。
弘明は「育休を取った自分」を、家族のために「やるべきことをやった男」として強く自認している。しかし実際に家庭内で起きているのは梨香子の負担が一層重くなっているという悲しい現実だ。夫の育休は制度的には一般化しつつある一方で、家庭内でそれが十分に生かされているのかということを問いかける。
さらに物語は、義父母を巻き込んだ子どもの命に関わる重大事件をきっかけに、夫婦の決定的な決裂へと進んでいってしまう。夫の育児に対する無責任さにどうしても我慢ができなくなった梨香子は、子どもを連れて実家へ帰り、離婚を考え始める。果たして彼女はどのような選択を下すのか、最後まで見届けてほしい。
育児・介護休業法の改正によって、男性の育休取得率は年々上昇し、以前よりはるかに身近なものとなった。しかし本作は、その変化とともに生じた新しい問題に目を向けている。制度が変わっても、それを使う者の意識が更新されなければ全く意味がない。あらためて育休制度の意義と、どう活用すべきものなのかを、夫婦で考え、話し合う機会をくれる作品だ。
文=ゆくり
