「損したくない」が一番損。主婦層にも刺さった“割に合わない”成功法則『割に合わないことをやりなさい』【小玉歩 インタビュー】
公開日:2026/2/13
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年3月号からの転載です。一部本誌とは内容の異なる部分がございます。

「効率よくやっているはずなのに、なぜか手応えがない」「無駄を減らしたのに、仕事がうまくいかない」——そんな違和感を覚えたことはないだろうか。
コスパ、タイパの意識が当たり前になり、生成AIによって誰もが一定以上の成果を出せるようになった今、効率化はもはや“差別化”にならなくなりつつある。
3000人以上のビジネス立ち上げを支援してきた小玉歩さんが、そんな時代にあらためて注目しているのが、あえて手間をかけること、いわば“割に合わないこと”だ。現場で、そして自身の会社の経験を通して、効率の対極にある行為こそが、結果として信頼や売上につながっていることに気づいたという。
合理性だけでは測れない価値は、どこから生まれるのか。効率主義の先で見えてきた、人間らしい働き方のヒントについて話を聞いた。
「コスパ」「タイパ」にうんざりしていませんか?
コスパ、タイパという言葉に象徴されるように、今は「効率の良さ」が正義として語られる時代だ。外食はグルメサイトで外さない店を選び、移動は地図アプリで迷わないルートをなぞる。失敗しない、手間をかけないために、私たちは“割に合わないこと”を避けるのが上手くなった。
そんな現代人の効率至上主義に敢然とNOを突きつけるのが本書、『割に合わないことをやりなさい』だ。著者の小玉歩さんは、かつて2012年刊行の著書『クビでも年収1億円』で「飲み会は行くな」「メールは返すな」と徹底した効率主義を呼びかけていた。それが今、いわばかつての主義主張と真反対ともいえる本を発表したわけなのだが、その背景には時代と自身の変化があったと語る。
「あの本を書いていた10年代は、まさにコスパ、タイパの意識がこれから“くる!”という肌感覚がありました。実際、当時のサラリーマンは必要以上に無駄な仕事が多かったと思います。その考えは今も変わっていません」
効率の価値が薄れた時、売れるのは“手間の人”だった
しかし、ここ数年でその状況は大きく変化したという。
「生成AIの登場で、誰もがコスパ・タイパよく働けるようになりました。だからこそ、効率そのものの価値は急速に薄れています。人間が効率性でAIと勝負しても絶対に勝てません」
そんなふうに“効率のありがたみ”が薄れていくのを実感する中で、あることに気づいた。
「僕がビジネスを教えている人たちの中で、最後に売り上げを伸ばしているのは、手間のかかることを避けない人たちだったんです。たとえば、目標を達成したお客さんとお祝いのランチに行く。フィードバックする時も、一人ひとり動画を付けて丁寧に返す。めちゃくちゃ大変で割に合わないんですけど、そういう人ほど口コミで商品が売れていくんですよね」
なぜ、その手間が効くのか。小玉さんは「相手の心を揺らし、忘れられない体験を残すから」だと語る。
割に合わないことこそが感動を生みだす
小玉さんは、生成AIが広がるほど、人間の強みは“人間らしさ”に回帰するのではないかという。
「誰かと直接会って話をする。手書きの手紙を出す。商品のラッピングにひと手間かけるなど。もっと効率よくできるじゃないか、ということをあえてする。その積み重ねが、信頼になって返ってくるものです」
AIにはできないことは他にも。
「AIは優秀である一方、僕らの予想を覆す発想やアウトプットはできません。そこに僕ら(人間)の勝機がある。AIより、はるかにコスパもタイパも悪いけど、ときとして想定外の感動を生みだすのは、人間だけですね」
AIはあなたの発想を超えられない
「僕を含めて多くの人は自分の想定している答えを導きだすために、AIを使っているでしょう。壁打ちや相談相手として。だからどうしても自分の発想を超えるものは出てこない」
対して人間の作業は間違えやすかったり、感情がともなったり、加えて時間がかかったり。
「でも、そこが相手の心を揺らして、感動を生むんです。ちょっとした気遣いとか、手間を惜しまない姿勢とか。僕はこれを“感動資本”と呼んでいます」
ただ、感動資本はすぐに成果が出るタイプの投資ではない。
「じわじわ時間をかけて効いて、気づいた時には人生に大きな影響を与える“レバレッジ”がかかる。だから一つ一つ、徳を積むような気持ちで貯めていってほしいんです」
誰もが80点を出せる世の中で「あなた」の存在価値を高めるには?
そのほか本物性、セレンディピティ、社会資本といった、人間だからこそできることや、その価値の可能性について本書では解き明かしている。
「今後は様々なものの価値が転換していくと思います。AIを使って誰でも創作ができるようになった今、新しく何かを創ることより時間を経ても残っているものに価値が見いだされるでしょう。美容師や料理人、職人など手を使う仕事の重要性も高まってくるだろうし、時間をかけて何かをすることの贅沢さ――失敗も込みで――に気づく人たちが増えてくるんじゃないかな」
これからは、AIで「一定以上の水準」は誰でも出せるようになる。だからこそ差がつくのは、その先だと小玉さんは言う。
「AIを使ったら誰でも80点まではいけるんです。ただ、そこから突出するのが難しいわけで。超努力して100点まで到達するか、感動資本を積み重ねて相手を感動させて選ばれるか。どっちにしても抜き出るには“割に合わない”ことをやらないとなので、僕はシンプルに目の前のことをやると決めています」
主婦層からも共感の嵐!
ビジネス書として書いたつもりだったけれど、ビジネスパーソン以外の層からの反響も多く寄せられた。
「親御さんの介護をしている女性から、自分のしていることに意味なんてあるのだろうかと苦しんでいた時本書の題名に惹かれて読んで、泣きましたという感想をいただいたんです。すごく嬉しかった。まさに今現在、自分は割に合わないことをしている、させられていると感じている方に読んでもらいたいんです。あなたがしていることにはきっと意味がある、と伝えたい。割に合わないことをするというのは、言い換えると人間らしいことをしている、ということなのだから」
AI時代を生き抜くための戦略をピックアップ!
“求められる人になる”心得4選
1.自分がされて嬉しいことを!
感動資本を築け!
最近、見知らぬ人からされて嬉しかったことはありますか? 買い物をした時に店員さんが親身になって相談に乗ってくれたとか。単なるギブアンドテイクではなく、相手を喜ばせようとしての行動は、感動となり、経済サイクルへつながっていくんです。
2.普段の自分がやらないことを!
セレンディピティを信じろ!
セレンディピティとは、偶然の発見や予想外の素晴らしい出会いのことを指します。たまにはネットで本を買うのではなく、書店へ行ってみませんか? 書店には、普段の自分なら絶対に辿り着かないであろう本との出会いがたくさんありますよ!
3.手間と時間を!
本物性を生め!
かけた手間と時間によって生まれる価値。それはあなた自身にしか創りだせない唯一無二の本物性です。そのいい例が料理です。あなたが大切な人のために頑張って料理を作ったら、それはどんな高級レストランの一品よりもおいしいと感じてもらえるはず。
4.飲み会がカギ!?
信頼を築け!
コロナ禍の時期、オンライン飲み会が流行りましたよね。だけど結局、定着しませんでした。やっぱりお酒を飲む時は顔を合わせてお喋りがしたいもの。飲み会で育んだ人間関係というのは、案外のちのちになって効いてきます。酒の席だからこぼれる本音や心の通い合いを大切にしましょう。
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『割に合わないことをやりなさい コスパ・タイパ時代の「次の価値」を見つける思考法』
小玉 歩 KADOKAWA 1760円(税込)
手間を惜しまず人と向き合う、失敗や寄り道を恐れずに挑む。そんな「割に合わないこと」こそが信頼や感動を生む――。かつて誰よりも効率と成果を追い求めた著者がたどり着いた、“人間の強み”とは? 効率至上主義が当たり前になった現代に一石を投じこれからの時代に必要な価値観を示す。
取材・文:皆川ちか
こだま・あゆむ●1981年、秋田県生まれ。フロントラインワークス株式会社代表取締役。キヤノンマーケティングジャパン株式会社を経て独立し、自身の経験を基に執筆したデビュー作『クビでも年収1億円』がベストセラーに。ビジネスパーソンを支援するオンラインスクールの主宰をはじめ、活動は多岐にわたる。本書は11年ぶりの新刊となる。
