【SUPER EIGHT 大倉忠義】「あえて順位をつける育成方針」って? 現役アイドル兼社長を成功に導いた経営哲学とは【書評】
PR 公開日:2026/2/16

ビジネスで重要なコミュニケーションや人材育成をテーマにした本は星の数ほどあるが、現役のトップアイドル×経営者の視点でそれらを語る書籍は他にないのではないだろうか。『アイドル経営者』(大倉忠義/講談社)は、そんなまったく新しい角度から、生き方や仕事のヒントを得られる1冊だ。
本書は、SUPER EIGHT・大倉忠義の初の書籍。著者は、アイドル活動や俳優業に加え、近年はSTARTO ENTERTAINMENT社のタレントの育成やライブ演出、グループのプロデュースも手がけている。2024年7月には新企業J-Pop Legacyを設立し社長に就任。本書ではそんな、アイドルとして第一線を走りながらエンタメ企業を率いる「アイドル経営者」である著者が、表現者、そして社長として大事にしている言葉や哲学を明かしている。
「自己成長・マインド編」「人間関係・コミュニケーション編」、そして「アイドル・プロデュース編」の3章にわたって語られるのは、著者の45のマイルール。アイドル・エンタメ業界ならではの考え方だけでなく、「選択を求められたら直感2秒で答えを返す」「大切なことを判断するときは全員で直接話す」「情が厚くなり過ぎるとビジネス関係は破綻する」など、業界問わず、ビジネスや人間関係で幅広く役立つ言葉も満載だ。
しかし特に興味深いのは、20年以上、アイドル、そしてプロデューサーとして人の心を動かしてきた著者の独自の視座だ。たとえば、社長であると同時にタレントでもある自分にスタッフが委縮してしまう事態を受けて、周囲が発言しやすい環境を作ってきたこと。経営者としての自分が発するアイディアがわがままであるほど、結果的に良いものが生まれたこと。グループとしてデビューする前、自分のアイドル観を理由にドラムを担うことを断り、悔やんだ経験で得た「中途半端な場所にいる人ほど、邪魔なプライドを持っている」という気付き。デビュー20年を超えても絶えないSUPER EIGHTの輝きや著者のプロデュースワークの成果が、それらの言葉に重い説得力を持たせている。デビュー前や若手時代の自分を支えた言葉や、関西のグループの先駆けとしてコントやバンド演奏などのチャレンジを続けてきた経験も、著者ならではの経営哲学を形作ったことがわかって興味深い。
ファミリー的な育成環境や、あえて順位をつける育成方針など、著者が大事にするルールの中には、今のビジネスシーンでは王道から逸れつつある考え方も存在する。彼は、新しい価値観や流行を積極的に受け入れつつも、昭和や平成の良い価値観まで排除する必要はないと考えているからだ。後進に対する深い愛に裏付けされたそれらのルールは、社会や部下に遠慮するあまり忘れがちな「人」を中心とした経営や育成の考え方を思い出させてくれる。1985年生まれの著者の同世代は、世間ではマネジメントを担う働き盛りの世代。彼の言葉は、新しいステップでの仕事や人材育成に悩める多くの人たちの背中を押すだろう。
本書はもちろん、アイドルとしての著者やSUPER EIGHTのストーリー、そして著者がプロデュース・結成に携わったなにわ男子やAぇ! groupへの思いなど、STARTO社のタレントの話題も豊富だ。著者のアイドル観や育成の姿勢を知ると、私たちが彼らを愛さずにはいられない理由がよくわかる。アイドルを熱く応援してきた人も、アイドル×経営という画期的な視点に惹かれるビジネスマンも、読めば心が大きく動く1冊だ。
文=川辺美希
