日本最大手・帝国重工が巨額赤字&経理部長が責任をとって東京湾に沈む。決算書に隠された謎を追ううちに会計の知識が身につくミステリ学習本【書評】
公開日:2026/2/10

気づいたら夢中になってページをめくっていた。好業績が続いていた大企業が発表した、過去最大の赤字決算。経理担当者の自殺。「一体、この会社で何が起きているのか」と、その謎を追うことに必死になり、そうしているうちに、決算書を読む基礎知識が自然と身についていた。数字には苦手意識があったのに、である。
そんな夢のような本が『会計が面白いほどわかるミステリ 決算書に隠された7つの罪』(白井敬祐:著、三ツ矢彰:絵/ KADOKAWA)。「マンガ」→ 「会話」→ 「クイズ(会計ミステリ)」 → 「解説」 の4ステップで、物語のドキドキをそのまま“財務を読む力”に変えるエンタメ学習書だ。「決算書を読めるようになりたい」「営業部員として自社や他社の財務状況を正しく理解できるようになりたい」――会社の経理に関わる者でもそうではなくても、そういう「会計」に興味があるビジネスパーソンにこの本はおすすめ。これほど楽しく、わかりやすい「会計」本は他にはないだろう。
5年連続最高益を更新していたのにもかかわらず、突如巨額赤字へ転落した帝国重工。財務担当の取締役と経理部長は赤字決算発表後に失踪し、東京湾の防波堤では経理部長の「赤字決算の責任を取る」という遺書が見つかった。経理部のファイルにはおかしな帳簿処理がある。営業現場に違和感を覚える営業部員と、失踪した上司を追う経理主任は、会計探偵・くろいの協力を得て、会社の決算書を読み込み、関係先の調査を進めていく。
極上のミステリを楽しむうちに、「会計」の面白さを体感できる
世の中にマンガをベースとした学習書は少なくないが、この本ほど惹き込まれるストーリーはなかなかない。なんという没入感だろう。物語の登場人物の1人になったような気分で登場人物たちと決算書を眺めていくうちに、無機質な数字の背後にあるものが見えてくる。決算書を読むということは、単に数字を追う作業ではない。その数字の向こう側にある、人々の努力、野心、そして時には欲望や過ちを読み解くことだ。難しいものだと思い込んでいた「会計」の知識がだんだんと面白いとさえ感じるようになってくるから驚きだ。
探偵気分で解けるクイズで、着実に力が身につく
本書では全15話のストーリーの合間に29問のクイズが出題されるが、探偵になったような気分で“謎解き”に挑むことができる。匿名の告発状に添付された財務データをもとに不正に塗り固められた“仮面の会社”を探ったり、内部監査室で奇妙な取引記録から消えた代金の行方を読み解いたり、どれも簡単ではないが、だからこそ、興味をそそられる。
たとえば、こんな問題。決算データをもとに白井商事と黒井商事のどちらと契約すべきかを分析して選ぶというクイズだが、あなたは正しい判断を下すことができるだろうか。
ビジネスパートナーとして契約すべきなのはどっち?
A.白井商事と契約する。
B.黒井商事と契約する。
資料①:白井商事の決算データ
・売上高 5,000億円
・利益 1,000億円
・資産 8,000億円
・借金 5,000億円・売上の増加傾向
・過去3年、連続20%増加
・資産の内訳
・現金 300億円
・機械 7,700億円
資料②:黒井商事の決算データ
・売上高 100億円
・利益 50億円
・資産 200億円
・借金 0円・売上の増加傾向
・過去3年、横ばい
・資産の内訳
・現金 150億円
・機械 50億円

