日本最大手・帝国重工が巨額赤字&経理部長が責任をとって東京湾に沈む。決算書に隠された謎を追ううちに会計の知識が身につくミステリ学習本【書評】
公開日:2026/2/10

正解は「B.黒井商事と契約する」。一見すると白井商事は優良企業だが、実は倒産リスクが非常に高い。借金5,000億円に対し、手元の現金はわずか300億円と、借金に依存しており、資金繰りは極めて危険な状態だ。一方で、黒井商事は、売上100億円で成長もないため、地味に見えるが、無借金経営で利益率50%と非常に高く、現金も潤沢。ビジネスの取引相手を選ぶ際は、売上規模や成長率といった派手な数字に惑わされてはいけない。クイズを解く中で、経理を担当していなくても、会計の知識がいかに大切かということを実感させられるだろう。
登場人物たちの会話で端的なイメージがつかめる
解説がわかりやすいのもありがたい。特に、魅力的な登場人物たちの会話は楽しく、イメージしやすい。「例えるなら、B/S(貸借対照表)は、『今、お財布の中にいくら入ってる?』、P/L(損益計算書)は、『先月、いくら稼いで、いくら使った?』って感じかしら」「B/Sを見ればお前の今の財布の中は空っぽなのがわかり、P/Lを見れば先月派手に遊びまくったことが原因というのがわかるってことだ」――そんなやりとりと解説を見れば、財務三表の基本のイメージがつかみやすく、それぞれの役割やつながりが見えてくる。その他にも、EPSやPER、PBRといった投資指標の読み方、売掛金・棚卸資産・キャッシュの動き、固定資産額と減価償却費の比率、法定耐用年数との乖離など粉飾の兆候を数字から嗅ぎ分ける視点、黒字なのに倒産してしまう理由など、会計にまつわる基礎知識が満載。そんな知識をミステリの謎を追う過程で、楽しく知ることができるのだ。
「会計」の本なんて、どれも小難しいものだと思っていた。だが、この本は違う。ミステリとして楽しむうちに、自然と知識が身についてしまう。数字を読み解くのが楽しくなる。そんなこのエンタメ学習書は今まで「会計」は難しいと学ぶのを諦めてきた人、勉強を始めても挫折ばかりしてきた人、ズボラな人にこそおすすめ。巨大企業の赤字の原因を数字から探る楽しさを、謎解きをするうちにいつの間にか知識が身についている感動を、ぜひともあなたも体感してほしい。
文=アサトーミナミ
