福地桃子さんが選んだ1冊は?「偶然手にした一冊が私の心を満たす──そんな運命的な出会いを楽しんでます」
公開日:2022/9/10

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、福地桃子さん。
(取材・文=倉田モトキ 写真=TOWA)
「小学生の頃、学校の図書室で『あさ』と『ゆう』という写真集を読んでいたんです。予約が入っていなければ毎週のように借りていました。写真と一緒に短い言葉が添えられていたのですが、それが谷川俊太郎さんの詩だったということを大人になって知りました。谷川さんの本はエッセイなども読んでいたので、小さい頃と今の自分がつながっていたことに不思議さと喜びを感じましたね」
今回福地さんがおすすめしてくれたのは谷川俊太郎の『どきん』。古本屋で表紙に惹かれて手にしたそう。
「なかでも、『春に』という詩が大好きで。一節の中に書かれているように、文章そのものがエネルギーに満ちているんです。普段、お散歩をしていて生命力を感じる植物を見かけると写真に撮りたくなるのですが、それに似た感覚で、ページを開くたびにいろんなエネルギーをもらえる。でも、どこか心が落ち着くのは、きっと和田誠さんの魅力的なイラストがあるからなんだと思います」
本選びは「いつも本能」と微笑む。
「事前に内容を調べることはせず、突然手に取りたくなった直感を信じて買う。すると、“この本は今の自分に必要なものだったんだな”と感じることが多くて。そんな運命的な出会いをいつも楽しんでいます」
主演映画『あの娘は知らない』も、彼女にとって運命的な出会いをはたした作品だったのかもしれない。
「奈々は家族を失い、寂しさを抱えているけれど、彼女の中でそれが少しずつ日常になりつつある。そうした哀しみと共存して生きている姿を、いかに自然に表現するかが大変でした。井樫彩監督がくれた、『この女の子は奈々でもあるし、福地さんでもあるんですよ。だから考え過ぎず』という言葉が支えになりました」
海辺にある小さな旅館を継いだ彼女の元に、突然現れた青年・俊太郎。亡き恋人が最後に訪れた街の風景を見に来たという彼との時間は、いつしか互いの心の隙間を埋めていく。
「男女の物語ですが、恋愛作品ではないんです。不思議な関係性も、この二人だから成立するようなところがあって。(岡山)天音さんとのお芝居も、その瞬間に生まれる感情を大事にしていったので、自分でも想像していなかった表現が生まれることがありました。また、二人の間に流れる波の音や街の景色も彼女たちの一部のような存在感を放っていて。観る人によってさまざまな印象が残る作品だと思いますので、どんな感想をいただけるのか楽しみですね」
ヘアメイク:FUMIKO HIRAGA for SENSE OF HUMOUR スタイリング:武久真理江
映画『あの娘は知らない』

監督・脚本:井樫 彩 出演:福地桃子、岡山天音、野崎智子、諏訪太朗、久保田磨希、安藤玉恵ほか 2022年9月23日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開 ●両親を早くに亡くした奈々は海辺の町で旅館を営んでいた。ある日、泊めてほしいと青年が旅館を訪ねてくる。1年前、今は亡き彼の恋人がこの旅館を利用していたと知り、彼女が最後に見た景色を追っているのだという。心当たりを感じた奈々は、彼を泊めるのだが……。 (c)LesPros entertainment
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