若き刑事が“腐敗警官”の摘発に挑む! 出世劇としても楽しめる全英で大人気の警察小説シリーズ第3弾!
公開日:2022/10/21

実社会に悪人がのさばるのはいただけないが、それが小説の中ならば大歓迎だ。それも、主人公に対する悪が手強わければ手強いほど、物語は面白い。
累計発行部数2億7500万部突破の世界的ベストセラー作家・ジェフリー・アーチャーによる「ウィリアム・ウォーウィック」シリーズは、1人の警察官が、稀代の詐欺師から冷酷な麻薬王まで、毎回さまざまな凶悪犯に立ち向かう警察小説。おぼっちゃん育ちで理想に燃える主人公が手強い敵と対峙しながら組織に揉まれ、じょじょに刑事として成長し、キャリアを積み上げていく姿は痛快。警察小説としてはもちろんのこと、出世物語としても楽しめる爽快なストーリーに今、多くの人が魅了されている。
ロンドン法曹界の著名な弁護士の父親の反対を押し切って憧れの警察官になる道を選んだウィリアム・ウォーウィック。一介のパトロール巡査としてキャリアをスタートさせた彼は、あることを機にロンドン警視庁(スコットランドヤード)の美術骨董捜査班に抜擢され、捜査巡査として大物美術詐欺師を追いつめることになる(『レンブラントをとり返せ-ロンドン警視庁美術骨董捜査班-』)。
捜査巡査部長に昇進したウォーウィックを待っていたのはロンドンの闇社会を牛耳る麻薬王(『まだ見ぬ敵はそこにいる ロンドン警視庁麻薬取締独立捜査班』)。次々襲いかかる危機にボロボロになりながらも事件解決に奔走した彼は、第3巻となる最新刊『悪しき正義をつかまえろ ロンドン警視庁内務監察特別捜査班』(戸田裕之:訳/ハーパーコリンズ・ジャパン)で警部補に昇進し、新設の内務監察特捜班を指揮することに。
班の目的は、警察内部に潜む腐敗警官の摘発。ウォーウィックは、チームの仲間たちとともに、マフィアとの関わりが疑われる花形刑事におとり捜査を仕掛けるが、味方の中に裏切り者がいる疑いが浮上し…。
逮捕成績の優れた百戦錬磨の刑事の裏の顔を探るのでさえ困難極まりないが、ウォーウィックが立ち向かう敵はそれだけではない。前作の麻薬王、さらには因縁の相手である美術骨董詐欺師マイルズ・フォークナーに、ルール無用の悪徳弁護士まで、あらゆる難敵が手を組んで彼の前に立ちはだかり、頭を次々と悩ませていくのだ。
良くも悪くも「いいとこのおぼっちゃん」で好青年のウォーウィックが、狡猾な悪党どもをどうやって追い詰めていくのか。この作品は、犯罪者たちを追い詰める警察小説であると同時に、その犯罪者がどう裁かれるかを描く法廷小説であり、そして、1人の青年の成長譚でもある。
思うように進まない捜査と息つく暇も与えない裁判論戦。あの手この手でウォーウィックを翻弄する強敵たちとの一進一退の攻防。あらゆるエンターテインメント要素を取り込みながらも、それらが巧みに絡み合い、読み手たちの心を掴んで離さない。そして、仲間たちと力を合わせながら、正義を貫き通そうと懸命にひた走るウォーウィックの姿に何だかこちらまで勇気づけられてくる。
どんなに理不尽な目に遭っても諦めずに立ち上がる。そんなひたむきな姿は、すべての働く者の心に強く響くのではないだろうか。なんとも心地いい読後感。まだこのシリーズに触れたことがない人は、着実にキャリアを積み上げていくウォーウィックの成長をぜひとも見守ってみてほしい。
文=アサトーミナミ