急に規制が緩まった電動キックボード、新宿のジェンダーレストイレに物申す。ニュースと常識を見直し、視野を広げるには
更新日:2024/2/7

生きていると毎日のように驚くようなニュースが耳に入る。そのニュースに対してどう考えるか口にすると、「あなたはこんな思想の持ち主」と他人から断定されてしまい、理不尽だなあと感じることもよくある。私は思想に関係なく、さまざまな書籍を読むことは自分の視野を広げられると考えている。特にわかりやすく、自分の見解もまじえて書く作家、百田尚樹さんの時事問題をとらえた著作は自分の考え方を知るきっかけ作りに最適だ。『大常識』(百田尚樹/新潮社)も、そんな百田さんが周囲を恐れず最近起こった驚くべき出来事に対して堂々と持論を述べる書籍である。中でも特に私が共鳴した4つの章を取り上げたい。
突然だが私は運転免許を持っていない。家族からはよく「あなたはぼーっとしているから。被害者はもちろん、加害者になるのだけはやめなさい」と言われて腹を立てていたのだが、百田さんは“「キックボード利権」を疑う”と題した章の最後に、完全に私の親の発言と同じことを書いていた。キックボード利権とは、2023年7月から電動キックボードが免許なしでヘルメットをかぶらずに乗っても良いことになり、交通ルールが大幅に緩和されたことを指す。たしかにこれは電動キックボードを使う側にとっても、加害者になる危険性もはらんでいて非常に危険だ。
次に“あだ名は差別のもとなのか”という章。同級生をあだ名やくん付けで呼ぶのが禁止だとニュースで見た時、正直、百田さんと同様に私もわけがわからなかった。ちなみに私の好きな作家もこれには疑問を感じていると著書で明かしていて、本書で百田さんが取り上げたことで「やっぱりおかしいよね」と再認識した。子ども時代の私もあだ名で呼ばれていたが、そのあだ名を思い出すと、今でも当時の友だちをなつかしむことができる。これからは友だちを「ちゃん」付けで呼ぶことも呼ばれることも、だめなのだろうか。私自身、「ちゃん付け」で呼ばれるのは好きで、今も多くの友だちと「ちゃん」付けで呼び合っている。
“女性の安心を犠牲にするな”と“被害者の声にこそ耳を傾けよ”の章は、特に読者の多くが共感するのではないだろうか。前者は歌舞伎町のとあるビルの2階に「男性用(小用のみ)」と「ジェンダーレストイレ」しかないことを指していて、女性である私にとって恐ろしいニュースだったので覚えているのだが、男性でも同じように女性の安全を危惧している人がいると知って安心した。身体が男性、性自認が女性の人と、どちらも男性の人を、完全に見分けられる人なんてほとんどいないのではないだろうか。実際に海外では性自認を女性だと偽ってトイレ等に入ったことによる性犯罪が起きている。
そして後者は、私自身、日本は加害者の更生には前向きに取り組んでいるのに、被害者やそのご遺族の支援が足りていないと考えていたので、代弁してもらったような気持ちになった。
他人の明日を突然奪っておきながらたった20年の刑務所暮らしでご破算だなんて、どう考えても納得がいきません。
日本が犯罪者に甘いことについて、百田さんはほかの章でも述べている。殺人のような大犯罪はもちろん、客観的にはちょっとした事件に見えても、被害者は一生心に傷が残り、人生が狂ってしまうことは存分にありうる。実際に自分や自分の家族、友人が被害者になったらと思うと、法でさばいてもらえない悔しさが、ずっと心に残り続けるだろう。
本書を読むと、共感する点、共感できない点をそれぞれの読者が見つけるはずだ。それは自分の考え方を見つめ直したり、再認識したりするきっかけになるのではないだろうか。
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