「幸せな人生」に必要なのは、思ったより当たり前のこと。TEDトーク再生回数歴代トップ10に入る話をまとめた1冊

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PR 公開日:2024/5/31

グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない
グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』(ロバート・ウォールディンガー、マーク・シュルツ:著、児島 修:翻訳/辰巳出版)

「幸せな人生」を送るために必要なものはなんでしょう?――あなたは、そんな質問を受けたらどう答えるだろうか。財産?地位や名声?家族?…人によってさまざまかもしれないが、実は万人に共通のシンプルな答えがあるのをご存じだろうか。再生回数歴代トップ10にランクインするTEDトークの書籍版『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』(ロバート・ウォールディンガー、マーク・シュルツ:著、児島 修:翻訳/辰巳出版)によれば、その答えは「よい人間関係」とのこと。「え?そんなことなの」と驚いた方こそ、ぜひ本書を手に取ってみてほしい。その理由が深く理解できるようになるはずだ。

 そもそもこの答えはどんな根拠に基づくのだろう。本書によれば、ハーバード大学では85年間、同一家族を二世代にわたって、彼らの人生を詳細に追跡調査した「ハーバード成人発達研究」を行ってきたといい、この答えはその調査結果を直接的な根拠としたもの。この研究はアメリカが世界恐慌から抜け出そうとしていた時期に、人生を成功や失敗に導く要因への関心が社会的に高まったことから始まったもので、被験者はのべ2000人以上。調査の第一世代は「健康で社会に適応した人間になる可能性が高そう」なハーバード大の2年生と、問題の多いボストン都市部の最貧困地区出身でも非行に走らなかった少年たちで、調査の第二世代はその子どもたち(そのため経歴はより多岐にわたる)。彼らが定期的に人生についての詳細な質問表に答え、対面調査に応じ、さらには血液検査などの身体のデータも提供してくれたからこそ集まった膨大なデータが、この究極の答えを「証明」したのだ。

 ところで「人間関係」といってもなんでもいいわけではなく、問われるのはその関係の「質」だ。「心の通う人間関係のなかで生きることが大切」であり、まずはそのような人間関係に入ったり、自ら作り出したりする必要があるわけだ。「そういうのが苦手なんだよ…」と避けてしまう人もいるかもしれないが、ここがこの先の人生を「幸福」にするか「不幸」にするかの分かれ道だとしたら、あなたはどちらを選ぶだろう?! ちなみに「自分は友情や親密な関係を築いているからもう大丈夫」と思う人もいるかもしれないが、果たしてそれをキープする努力は怠っていないだろうか? 本書によれば人間関係は筋肉と同じで何もしなければ衰えてしまうもの。逆にいえばエクササイズで筋肉を維持するのと同様、人間関係を維持するのにもエクササイズが有効であり、本書にはよい人間関係の作り方&維持の仕方について、より「自分ごと」として考えられる具体的なワークも紹介されているので参考になる。

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 本書によれば、幸福な人生には正常なコレステロール値より「人間関係の満足度」が必要で、実際、人間関係が良好な人ほど年齢に関係なく死亡リスクは低くなるとのこと。逆に孤独感は肥満の2倍健康に悪く、なんと1年あたりの死亡率を26%高めるというのだ。日本ではこの4月から「孤独・孤立対策推進法」が施行され社会的関心も高まっているが、こんな具体的な数字が出ているとなると焦らずにはいられない。本書のタイトルにもあるが「幸せになるのに、遅すぎることはない」のだ。自分の幸せな未来のために、手に取ってほしい一冊だ。

文=荒井理恵

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