雨の日に読みたい絵本(2024年5月 新刊&おすすめ絵本)

文芸・カルチャー

更新日:2024/5/16

なんだか退屈、なんだか憂うつ。外にも出れず、お日さまも隠れている雨の日は、体も心もすっきりしないものです。そんな時、ちょっと耳を澄ませてみると……ポツポツ、シトシト、サーッ、ザーザー、ゴゴーッ、雨音はその日、その時の天気によって実にさまざま。ささやかだけれど普段見過ごしていることに気づけるのも、雨の日の楽しみのひとつではないでしょうか。

雨の日の絵本を開いてみると、子どもたちにとって雨の感じかたは、本当にいろいろなんだなぁと実感します。
雨が降る、その瞬間を捉えてみたいという好奇心。雨しずくや水たまり、体いっぱいに浴びる雨の世界はいきいきと輝いてみえます。ちょっと複雑な気持ちを抱えている時に眺める雨は、まるで涙のよう。子どもだけで雨の中を歩くドキドキやワクワク、懐かしくてやさしい時間にほのぼのします。

不思議、楽しい、さみしい、気持ちいい……雨がもたらしてくれる感覚、感性。ぜひ大人のみなさんも絵本で味わってみてください。 

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憧れの父ちゃんの真似をしてみたくなったかみなりちゃん。どんどこどん!降らせたいのは、こめ?まめ?かめ?あれれ、『そらから ふるもの なんだっけ?』 

そらから ふるもの なんだっけ?

文・絵:岩田 明子

みどころ

雲の上でお留守番しているかみなりちゃん。
ちょっと憧れのとうちゃんの真似をしてみたくなります。
たいこをどん!
「えーと… なんて いうんだっけ?」

あれあれ大変、かみなりちゃん。
なにを降らすのか忘れちゃったの…!?

「そうだ!
 まめ ふれ まめ ふれ、どんどこどん!」

あーーーやっちゃった。
すると、空の上からは
「ぽつぽつ ぽつぽつ ぽとぽと ぽとぽと…」
色んな種類のお豆さんがたくさん降ってきた!!
少し違うよね?

「そうだ!
 こめ ふれ こめ ふれ、どんどこどん!」

…そうじゃなくて。

「かめ ふれ かめ ふれ、どんどこどん!」

これじゃあ、地上も大騒ぎです。
そろそろ正解を思い出してあげて、かみなりちゃん。

「そうだ こんどこそ!」

頼むよ、かみなりちゃん。
こんな調子でちゃんと「あれ」を降らすことはできたのでしょうか。

作者は「ばけばけばけばけ ばけたくん」シリーズで大人気の岩田明子さん。この作品も、またまたみんなで読んだら盛り上がりそうですよね。なにしろ、みんなが想像している斜め上の飛んでもないものが次々に落ちてくるんですから、たまりません。かみなりとうさん、早く帰ってこないかな…。

みんなで笑いながら、かみなりちゃんの応援をしながら、このヘンテコなやり取りを存分に楽しんでみてくださいね。

お庭で見つけたかたつむりを見ようと誘っても、妹とお昼寝中で生返事。「ママなんきらい」上の子の気持ちがキュッと胸に刺さる『まーくんのあめのひ』

まーくんのあめのひ

作:みかみ えみ

出版社からの内容紹介

まーくんはお庭で見つけた「かたつむり」をママと一緒に見ようと、妹とお昼寝中のママを呼びます。
でもママは「うーん」と生返事。
「ママなんかきらい」と拗ねてしまったまーくん。
すると、ポツン、ポツンと雨が降ってきて…

弟や妹にかまってばかりで寂しい思いをしたお兄ちゃんやお姉ちゃんの気持ちに共感できる一冊です。

降るかな?降ってくるかな?まだかな?今日は降らないのかな……諦めかけたその時ーー優しい気持ちに包まれる韓国発の雨の絵本『ふるかな ふるかな?』

ふるかな ふるかな?

作:キム・ジョンソン訳:せな あいこ

出版社からの内容紹介

黄色いレインコート、黄色い長靴に黄色い傘をもって、女の子は愛犬といっしょに雨がふるのを待ちわびています。ふるかな? もうふってくるかな? まだかな? きょうはふらないのかな。……あきらめかけたとき、ぴとっ! と雨粒が。大喜びで、雨の中ではしゃぐ女の子とわんちゃん。ぴとん、ぴちゃんという雨の音にまで聞きほれます。でも、この雨、実はね……というオチが最後のページで明かされます。やさしい気持ちでいっぱいになる、愛らしい韓国の絵本。

ヒゲの湿り具合で明日の天気がわかるネコバアは天気予報屋。お祭りの日の朝、お店に青い目のたいふうたろうがたずねて来て……!『ネコバアのおてんきや』

ネコバアのおてんきや

作・絵:いしあい つるえ

みどころ

あしたは、森のおまつり。
どうぶつたちは、天気を心配して、ネコバアのところへやってきます。
ネコバアはヒゲのしめり具合で天気が分かるので、「てんきよほうや」をしているのです。

ところが、おまつりの日の朝、ネコバアの家にやってきたのは、大きな青い目!
青い目の主は、「たいふうたろう」という名前の台風の目でした。「たいふうたろう」は、どっちにいっても嫌がられてしまうのでどこにいったら良いか分からなくなってしまい、ネコバアに相談しに来たといいます。ネコバアは「たいふうたろう」を無事に送り出すため、森のどうぶつたちにも協力してもらい、奮闘するのですが……。

さて、行き先を見失ってしまった「たいふうたろう」に必要だったのはどんなことだったのでしょうか。
伝わってくるのは、自分のいいところもこまったところもそのままを受けとめることの大切さです。

作者のいしあいつるえさんは、カラーセラピスト・アートセラピストでもご活躍中とあって、空の色や雲、「たいふうたろう」の目の色、海の水や波……などが色彩豊かに描かれています。またネコバアやどうぶつたち、「たいふうたろう」の表情の豊かさにも注目してみてくださいね。

大きな水たまり、中をのぞきこんでびっくり大騒ぎの動物たち。だって落っこちているのは……!?読み聞かせも盛り上がる一冊『みずたまり』

みずたまり

作:アデレイド・ホール絵:ロジャー・デュボアザン訳:こみや ゆう

みどころ

スイス生まれの絵本作家、デュボアザン描く、カラフルな動物たちの姿が楽しい絵本です。

ある日、一羽のめんどりが機嫌よく庭で餌をつついていると、ちょうど近くに大きなみずたまりが広がっていました。
めんどりはみずたまりをのぞきこみ……「コケーッ! まあ、たいへん! かわいいめんどりが、みずのなかにおっこちてるわ!」
あわてためんどりは、納屋のそばでとうもろこしを食べている七面鳥に知らせます。
走って見に行った七面鳥は「ちがう! おっこちてるのは、かわいいめんどりなんかじゃない。おおきなりっぱなしちめんちょうだ!」

さあ、今度は、七面鳥の話を聞いたぶたがよたよたやってきます。
ぶたもまた、みずたまりをのぞきこみ……。
だんだん動物は増えて、上を下への大騒ぎ。いったいどうなっちゃうの!?

横長の画面(右片面)いっぱいに描かれた構図が魅力的。
白い大きなみずたまりに次々動物たちが顔をのぞかせ、「たいへんだ!」「(自分とおなじ動物が)おっこちてる」「たすけてあげなきゃ!」と思い込みます。
左から、右からと、それぞれやってきてのぞきこみ、その後の右往左往ぶり、大さわぎぶりといったら!
解決してそれぞれに去っていく姿もチャーミングです。

そしてまた動物たちのなきごえが楽しいこと!
「コケーッ!」「クルクルッ」「フゴ、フゴ! ブヒ、ブヒ!」と声に出して読んでみれば、そのおもしろさがきっと子どもをとらえること間違いなし。
(ちなみにわが家の3歳の男の子は「ブタがすき!」だそう)

文を書いたのはアデレイド・ホール。原書が出版されたのは1965年だそうですが、じつに構成がたくみで、あざやか。
おはなし会で重宝しそうな1冊です。
絵を描いたデュボアザンの魅力もあいまって、のどかな農場の風景の中に、あかるい幸福感が感じられます。
自然のふしぎさや、生きているおもしろさがさりげなく伝わってくるハッピーな世界観、子ども時代にぜひ味わってもらいたい一冊です。

雨の日、傘をささずに立つ女の子に青い傘を作ってあげた傘屋。その日から不思議なことが起こりーー教科書に掲載された名作童話『青い花』

青い花

作:安房 直子絵:南塚 直子

みどころ

うら通りに、傘の修理をしている小さな「かさや」がありました。
主人の若者は、山ほどの傘のなかに座って、毎日せっせと仕事をしていました。
ほそいほそい雨のふる日、かさやは、小さな女の子が垣根にもたれてぽつんと立っているのを見つけます。

「かさをもってないのかい」

かさやは女の子と、町へ傘にはる布を買いに行き、海や空の色に似た青い傘を作ってあげました。

その日から不思議なことが起こります。かさやのもとへ、町中の女の子から青い傘の注文が舞い込んだのです。大忙しになったかさやは――

教科書にも掲載されていた安房直子さんの名作童話『青い花』。
本書は、パステル画で描かれていた1983年刊行の絵本(岩崎書店刊)を、南塚直子さんが銅版画で全面的に描き直して出版されたものです。
銅版画で描き出される雨脚の線、鮮やかに画面に開く傘の美しいこと! 物語を包み込むような色彩に見入ってしまいます。
かさやが女の子とデパートでクリームソーダを飲むシーンも、ぜひ実際に手にとって眺めてほしい場面のひとつ。最高においしそうです……!

雨の日の少し切なく優しいファンタジー。
大切なことは何なのか、いつまでも心に残る物語です。

外は雨、さやちゃんとゆうちゃんはお母さんを迎えに行くことに。動物たちもついてきて……ほのぼのするかこさとしさんの絵本『あめのひの おはなし』

あめのひの おはなし

作・絵:かこ さとし

出版社からの内容紹介

あめのひに,おかあさんをむかえにいった,さあちゃんとゆうちゃんは,かえるちゃんたちと……。

『雨、あめ』降ってきた!レインコートを着て傘をさし、外へーー水たまりの波紋、クモの巣に光る雫、雨の日の美しい世界を描いた文字のない絵本

雨、あめ

作:ピーター・スピアー

みどころ

レインコートを着て雨のふる庭へ飛び出していく喜び、クモの巣に光る雨のしずく、水たまりに広がる波紋、びしょびしょの体をふいて温かい飲み物を飲む瞬間、雨上がりの庭の澄んだ空気。
画面隅々まで雨の日の楽しさ、美しさに溢れていて、いきいきと描かれた新鮮な世界が目に飛び込んできます。字の無い絵本。

特別なものは必要なし!遊びのがエキスパートが教えるアイデア満載、手軽な遊びのガイド『親子あそびのえほん』乳幼児から小学生まで幅広く楽しめる

親子あそびのえほん

文:武本 佳奈絵絵:平澤 朋子

出版社からの内容紹介

子どもたちにお話と遊びを届けるユニット「ピピオ」の実践から生まれた、子どもが喜ぶあそび集。なつかしい手遊び、歌あそび、個性派しりとり、体ゆうえんちなどイラストで紹介。

生き物にとっての恵みの水に迫る危機。地球をめぐる水の循環、気候変動や環境問題をわかりやすく提起するビジュアルブック『もし、水がなくなるとどうなるの? 水の循環から気候変動まで』

もし、水がなくなるとどうなるの? 水の循環から気候変動まで

文:クリスティーナ・シュタインライン絵:ミーケ・シャイアー訳:那須田 淳監修:竹内 薫

出版社からの内容紹介

人間が生きていくのに欠かせない水。大切な資源である水がなくなることは、あるのでしょうか? 水の特別な性質や、どのように循環しているのか、わたしたちの暮らしや産業との関係、水をめぐる権利や気候変動の問題までを、豊富なイラストでわかりやすく紹介します。
好評シリーズ〈地球の未来を考える〉第2弾。

「水の恩恵を受け続けるために、地球環境について考え、工夫し続けよう」監修者あとがきより

◇読者対象:小学校高学年以上 *常用漢字使用 *小学5年以上の漢字にふりがな

動画公開中!

テーマ:雨を楽しむ絵本

文:竹原雅子 編集:木村春子