「面白ければなんでもあり」の「花とゆめ」。ファン必見の創刊50周年記念展で、雑誌の歴史を振り返る
公開日:2024/5/31
5月24日から開催されている「花とゆめ」誌上で連載された原画を一挙展示する「創刊50周年記念 花とゆめ展」。催しのテーマは「パーティー」で、半世紀の長きにわたって「花とゆめ」を盛り上げてきた漫画家、読者、編集者が一堂に会する祝祭の場となっている。
会場エントランスには50周年をお祝いする巨大な“アニバーサリーケーキ”が鎮座。花とゆめコミックスのテーマのトリコロールカラーと、同誌を代表する先生方の作品が上から順に時代が下る構成で飾られており、背後の大型パネルとともにパーティー会場へ集ったゲストたちを歓迎してくれる。その先には「花とゆめ」50年の歴史をたどる年表と、コミックス第一号となった山岸凉子先生の『アラベスク(第2部)』の第1巻を先頭に歴代コミックスの第1巻の表紙がずらりと連なる展示がある。開会式で白泉社の菅原弘文社長は「1974年5月2日に『でたゾ、でたゾ! 新しい雑誌だゾ!』というキャッチコピーとともに月刊誌として創刊、付録つきで280円でした。当時はオイルショックの狂乱物価の真っ只中で、週刊誌や漫画雑誌のページ数が減らされるという状況の中でのスタートでした」と創刊時のエピソードを披露していた。「花とゆめ」のこれまでの歴史を振り返りながら、自分はどの時代から、どの作品から読み始めたのかなどを思い出してもらいたい。

続くエリアが本展の目玉である原画の展示だ。中へ入ると中央にパーティー会場のテーブルセッティングがあり、懐かしの付録の数々がディスプレイされている。壁面には誌面を彩った名作から最新作まで、歴代74名の漫画家による約200枚の原画(一部複製原画)が並ぶ。コミックスの表紙や雑誌の扉などを飾った美麗なカラーイラストや、名シーンの数々に胸が熱くなること間違いなしだ。最初に展示されているのは、美内すずえ先生の『ガラスの仮面』だ。連載第1回、母子共に住み込みする横浜・万福軒の年越しそばの配達120軒を夜中12時までにひとりですべてやったら、姫川歌子主演の舞台『椿姫』のチケットを譲ると店の娘杉子から言われた主人公の北島マヤがど根性でやり遂げるも、杉子の意地悪で強風に飛ばされたチケットを拾おうと真冬の海へ飛び込み……本展にはその後、念願のチケットを手にする名場面が飾られている。はあはあと息をするマヤの輪郭線の力強さ、芝居への情熱がほとばしる表情などを生原稿でじっくりとご覧いただきたい。


その先へ進むと「作家の仕事場再現」という一角があり、アナログ作画で『暁のヨナ』を描く草凪みずほ先生と、『覆面系ノイズ』や『恋に無駄口』の作者であるデジタル作画の福山リョウコ先生のデスクが再現されている。アナログとデジタルでデスク上に置いてあるものにどんな違いがあるのか、そして先生方のデスク回りの愛用品を楽しんでほしい。またアナログとデジタルに関しては『アラクレ』の藤原規代先生が手描きされた原画と、その原画を取り込んでデジタルで彩色された完成イラストが一緒に並ぶ興味深い展示などもある。この他にも漫画になる前のネームや名場面集、映像化・舞台化された作品の一覧などもあるので、どうぞ細部までお見逃しなきよう!

原画の展示を抜けた先にあるのが「編集部の小窓」だ。壁面の小さなドアの中には「花とゆめ」の編集部員が語るとっておきの秘話が隠されている。さらにその奥には、普段は白泉社本社に鎮座するマリネラ王国の若き国王パタリロ・ド・マリネール8世の黄金像が会場へ出張して出迎えてくれる。「クックロビン音頭」が流れる中でお参りした後は、『パタリロ!』の名言が使われたおみくじ(全22種類)を引いて運試しを。また来場者には出展作品のイラストを使用した全10種類のサンキューカードが手渡される。ランダム配布なので、どの作品になるかは当日のお楽しみだ。

また本展の音声ガイドは、インターネットラジオステーション「音泉」で2012年から「花とゆめ」の最新情報を配信している「花とゆめ 男子会!?らじお」とコラボ、番組ナビゲーターを務める声優の下野紘さんと島﨑信長さんが担当している。スマートフォンで音声を楽しむサービスのため、ご自身のスマートフォンとイヤフォンをお忘れなきよう(貸出もあり)。物販コーナーでは「花とゆめ」作品のグッズが所狭しと並んでおり、ファン垂涎の場となっている(沼り過ぎにはどうぞご用心を)。またコミックス第1巻を集めた販売コーナーもあるので、原画を見て興味を持った作品があればぜひ手に取ってみてほしい。会場に隣接するカフェ「THE SUN & THE MOON」では『ガラスの仮面』『フルーツバスケット』『スキップ・ビート!』『暁のヨナ』『赤ちゃんと僕』『スケバン刑事』『花ざかりの君たちへ』『ぼくの地球を守って』をイメージしたケーキやドリンクなどを提供。コラボメニューを注文すると特製コースターがもらえる(ランダム配布)サービスも嬉しい。

開催に先だって行われた内覧会では「歴代編集長が『花とゆめ』の創刊50周年を振り返る!」と題し、高田英之編集部長、長谷川貴広編集長が「花とゆめ」についてや本展の魅力を語り合った。高田編集部長によると、白泉社の創業メンバーで「花とゆめ」初代編集長を務めた小長井信昌氏のモットーは「面白ければなんでもあり」で、その精神に賛同した作家たちが集まり、それが今も脈々と続いているのだという。長谷川編集長は「流行りのテーマやネタはあるけれど、根底にあるテーマはどの世代の人たちにも通ずる」と言い、「花とゆめ展」が新しい作品を手に取るきっかけとなって、作品を読んだ方の人生が豊かなものになってくれると嬉しいと語った。それを受けて高田編集部長は「漫画というのは、明日また頑張ろうという力になるといいなと思って編集者たちが作り、先生方もそういう気持ちで描かれているもの。そんな“心の栄養剤”をこれからも読者へ届け、また新しい50年を頑張っていければいいなと思っております」と結んだ。

50周年の感謝が込められた「花とゆめ展」で、“心の栄養剤”をたっぷりとチャージしてもらいたい。
取材・文=成田全(ナリタタモツ)、撮影=三浦貴哉