SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第37回「賛成票多数」
公開日:2024/7/27
音楽活動を始めて早十九年経つ。すなわち今は二十年目の新人である。
これまでの活動を振り返ると決して順風満帆とは言い難いが、今のこの状況、そして環境を考えると、これまでの紆余曲折も一部を除いてあって然るべきだったのかなアなんて思っている。音楽をやる意義みたいなものを見つけられたのは、この文章を読んでくれているあなたに出会えたからに他ならない。
そして私はバンドマンであると同時に現代を生きる一人間として、SNSなんかもやっている。得意か得意でないかといえばお世辞にも得意だとは言えないが、かりそめであったとしても、コミュニケーションのツールとして利用させて頂いている。
何かを投稿する。主にライブの写真を、音楽のことを、自分の考えを。そうすると私をフォローしてくれている人から反応がくる。ボタンひとつで「いいね」と感情を表してくれたり、コメントをしたためてくれたり。
正直に言って良いだろうか。
滅茶苦茶に嬉しいです。
反応の一つ、コメントの一つがすごく嬉しいし、とても励みになる。改めていつもありがとう。
で。
そういったパワーがあるからこそ、SNSには気が付きにくい恐ろしさもある。これから書くのはアンチや口撃による表面化された恐ろしさではなく、肯定に潜む恐ろしさだ。
正しいと思った意見や、素敵に撮ってもらえた写真などを投稿する。するとそれに対して多くの「肯定」が、いいねやコメントという形で画面に表示される。それを見て私は「ありがたいなア」と、目を垂れ目にしたりする。数が多ければ多いほど目尻は下り、然も受け入れてもらったような感覚になるのだ。
ただ、それって本当だろうか。
本当であることは間違いないが、全ての側面においての本当と言えるのだろうか。
活動をする、存在を知ってもらう、好きになって頂く(この繰り返し)により、自分を支持してくれる人は増える。こんな風に書くと実に単純だが、その実はまじで単純ではないと知っているからこそ、支持して頂けることは尊く、本当に有難いことだと思う。なので、支持されているということが活動においてわかりやすく表面化し、そして私生活にも反映されたりすることに、具体的には「イエス」を言ってくれる人が増えていく状況にこそ、真っ当な危機感を覚えなければならないと感じている。
間違ったものに対しては「間違っている」と言われ、格好が悪いものには「格好が悪い」と言われる。すなわち「ノー」の意見。これは生きていれば避けて通ることは難しいが、喜ばしい感覚ではないからこそ、自らの人生に活かすことができる。ただ、悔いるか、恥じるか、自分のためか他人のためかはどうあれ、「ノー」を言われぬよう精進していたマインドは、「イエス」の母数が増加することにより若干バグる。あたかも自分が正しく素敵な人間であるかのように錯覚してしまう瞬間があるのだ。
さらに厄介なことに、「ノー」の意見を排除できる環境を、だんだん自分で作れるようになる。
しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。2025年4月に結成20周年を迎え、SUPER BEAVER 自主企画「現場至上主義 2025」を4月5日、6日にさいたまスーパーアリーナで行い、さらに、6月20日、21日に自身最大規模となるZOZOマリンスタジアムにてライブを行うことが決定。
自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中