SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第39回「海外旅行に行きましょう」
公開日:2024/9/27
すみません、気が付いたらというのは嘘です。その前にまずアブダビでのトランジットでひとくちゲボが出そうになるくらい超焦りました。構成を考えたらフランスに一気にジャンプしてた方がスマートかなアとか打算的なことを考えました、ごめんなさい。とりあえず続けます。
まず荷物がしっかり流れてきたことに胸を撫で下ろし、検査も何もないままスルーできるシャルル・ド・ゴール空港のゲートにドギマギしながら、フランス上陸。
家を出てから凡そ二十四時間、割とくたくた。
さア、どうする。
もうわからない。
とりあえず、出発前友人に聞いていたeSIMの設定を済ませ、交通系と翻訳アプリの存在を確認した。多分、これで野垂れ死ぬことはない。スリ対策のために購入したボディバッグのベルトをぎゅっと握りしめて気合を入れ直す。こうなると意外と肝が据わるもんなのだ人間。
早朝ではあるがとりあえず一旦荷物を置くためにホテルを目指すことに決めた私は、タクシーのアプリを起動させ、どうにか目的地を設定することに成功した。程なくしてアプリを通じて携帯に電話が掛かってきた。通話ボタンを押して、耳に当てる。
「Je viens d’arriver à l’aéroport」
「え?」
「où es-tu ?」
いや待て電話無理、きついきつい。
ボディランゲージも使えなければアプリも起動させられない。何言ってるかわからない。ジャスタモーメンを二十分繰り返し、ようやくタクシーに乗り込んだ私の旅はこうして始まったのであった。
と、ここまで割と具体的に書いていてなんなのだが、旅行記を書きたかったわけではない。この後、旅は波乱が波乱を呼び、もう大変なことの連続となるわけだが、そのディテールよりも「困る」の連続でした、という事実の方がわりかし大事だと思っているのだ。
実は海外に行こうと決めたのは、今まで経験してこなかったことをやろう、というメインテーマの裏に「困りに行こう」というサブテーマがあったのだ。これすなわちどういうことかというと、もうある程度しっかり大人になった今、日常生活の中で本気で困るという経験ができなくなってきたことに少し焦りを感じていた。住むところもある、ご飯も食べられる、という恵まれた状況下にいるからこその大変に贅沢な悩みだとは思う。しかし思い返すと「困る」ということを土壌に、私はたくさん学び、少しずつ成長を繰り返してきたような気がしている。だから、ツアーに加わらず、ガイドも付けず、見知らぬ土地に馳せ参じれば、大いに困ることになるのではないかと目論んだのだ。結果、そこまで求めていないってくらい本当に困ったことばかりになってしまったのだが。ちょい誤算。
思うようにいかない、だったらどうするか、と思考する経験は実は得難い。日々助けてくださる人がたくさんいるこの現状だからこそ、未知に飛び込みに行ってきましたよ、という話でした。
まア本当に良い経験になりました。度胸がつきました。色々できるようになりました。ますますこれから頑張れます。
調子づいた私は、その流れでブリュッセル、ロンドン、バンコクと旅をしてきました。面白いことがたくさんあったので細かい話はまた今度にでも。オウボワー。

しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。2025年4月に結成20周年を迎え、SUPER BEAVER 自主企画「現場至上主義 2025」を4月5日、6日にさいたまスーパーアリーナで行い、さらに、6月20日、21日に自身最大規模となるZOZOマリンスタジアムにてライブを行うことが決定。
自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中