「“自分に刃を向ける”作品に惹かれるんです」漫画家・鳥飼茜が愛読する活字作品【私の愛読書インタビュー】

文芸・カルチャー

公開日:2024/12/14

鳥飼茜さん

――もう1冊、村山由佳さんの『PRIZE-プライズ-』(文藝春秋)もおすすめいただいています。どうしても直木賞がほしい本屋大賞作家を主人公にした小説を、直木賞作家である村山さんが書く、しかも直木賞主催元の文藝春秋から刊行されるということで、発売前から、かなり話題になっています。

鳥飼 実はまだ、1話しか読めていなくて。というのも、知り合いの編集者が「とにかくおもしろいから読んでくれ」と、雑誌連載時に教えてくれたんですよね。もう、みなさんが気になっているとおり「本屋大賞はとれるけど直木賞はとれない」という設定が、とにかくひりひりするじゃないですか。1話では書店で行われたサイン会風景が登場するんですけど、最初は編集者目線でものすごく厄介な作家として描かれるんです。急に、新刊とは関係のない他の出版社から刊行された本にサインをすると言い出したり、出版社との食事会に誘われていない書店員を連れていったり、部数を絞った理由を問い詰めたり……。

――あらすじだけで、なんだかおそろしいような(笑)。

鳥飼 でもね、私がどうしてこの小説に心つかまれたかというと、私も同じことをやるな、と思ったからなんです。だって私は、そしてその小説家は、全部「よかれと思って」やっているんです。自分にはゆるぎない信条があって、それがあるからこそこれまで作品を描けてきたし、作家としても道を切り開いてこられた。多少いやがられてでも、その信条を貫かなければならない……と思っていることが、こんなにも周囲からは迷惑に映っているのかと(笑)。実際、小説家目線で描かれているところには、彼女なりの言い分があって、その気持ちがわからなくもないからこそ、衝撃的でした。それを村山由佳さんが書いている、ということにも。

――まさに、自分に刃を向けた小説ですね。

鳥飼 これ以上におもしろいエンタメがあるだろうか、と思いました。2025年1月に刊行とのことなので、発売後にしっかり読んでみたいと思います。

 ほかには、桐野夏生さんの小説は大好きで、新刊は必ず買って読むんですよ。作家としての姿勢も、作中での自由さ、誠実さも、すべてが憧れの人です。あと、手前味噌で恐縮ですが、私が参加したエッセイ集『私の身体を生きる』(文藝春秋)も、作家たちが驚くほどに自己開示していて、目を見張るものがありましたね。

鳥飼茜さん

――それこそ、現実の強度を感じさせられる作品ばかりでした。だからこそ、鳥飼さんをはじめとする作家さんたちが、フィクションに向き合う姿勢も改めて思い知らされたというか。

鳥飼 ただ、インタビューでもお話しましたけど、新作『バッドベイビーは泣かない』は、マンガを楽しく描くということを久しぶりに取り戻せている感覚があって。扱っているテーマに連なる現実に、向き合おうとすればするほど、自分には無理なんじゃないかと沈みそうになるけれど、私に描けるマンガのなかで、いちばん効果的だと思える手法を選んでいけばいいのだと気づきました。今日ご紹介した小説など、ほかの作品に刺激を受けながら、読者がおもしろく読める範囲で、私なりに一生懸命、胡椒をきかしていく作業を、続けていきたいなと思います。

<第58回に続く>

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