週に一度はみんなでご飯!『メゾンプアナの7人の食卓』ですり減った心もおなかも満たされる【書評】
更新日:2025/2/6

忙しない毎日の中では、一緒に住んでいても別々のものを食べる「個食」が多くなりがち。毎日でなく週に1度でも、誰かと一緒に旬の食材で彩られた食卓を囲んでみるのはいかがだろうか。きっと、お互いの悩みや思いを話しながら心もおなかも満たされる食事になるはず。『メゾンプアナの7人の食卓』(オトクニ/秋田書店)はともに暮らす7人の女性が、それぞれの問題や悩みを料理とともに分かち合う物語。読めばきっと誰かとご飯が食べたくなるはずだ。
大阪にあるシェアハウス「メゾンプアナ」には20代から60代まで、仕事も年齢も異なる7人の女性が暮らしている。このシェアハウス最大のルールは、毎週金曜の夜は全員で食卓を囲むこと。食事作りは当番制で、それぞれが季節の食材を活かした料理を食卓に並べる。美味しい食事を食べているうちに、自然と仕事や生活での悩みを語り始める住人たち。7人それぞれが抱えた葛藤、メゾンプアナに入居するまでのエピソードには共感できる部分ばかり。温かいご飯と住人たちの優しい言葉で、心がほぐれていくハートフルな物語だ。
各料理のレシピは話中と巻末に詳しく記されており、読み進めるほどにおなかが空いてくる。特殊な調味料や食材も少なく、どの料理も簡単に作れそうなのが嬉しいポイント。メイン料理は肉じゃがや串カツ、カレーなど馴染みのあるものばかり。副菜も「さっぱり大根漬け」「小松菜もやししめじのあえもの」など、自宅にある食材にひと手間を加えるものが多い。また、食事を美味しそうに味わう住人たちの表情にも食欲をそそられる。
日々の暮らしの中で、すり減っていく自信や元気。メゾンプアナの夕食会は、そんな心も腹ペコのおなかも温かく満たしてくれるだろう。疲れた時こそ、ちょっと手の込んだご飯を作って大切な人と食卓を囲む。それが、何よりの幸せではないだろうか。綺麗なイラストとともに、読者の心をそっと優しく後押ししてくれる一冊だ。
文=ネゴト / fumi