深くて濃い闇の中で『クジラがしんだら』【NEXTプラチナブック】

文芸・カルチャー

更新日:2024/12/27

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」(2024年11月選定)から、ご紹介する一冊はこちら!

頭上に降ってきたのは、何十年もの長い一生を終えた、大きなマッコウクジラ。においをかぎつけ、駆けつけたのは……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『クジラがしんだら』。深海という厳しい世界に生きるユニークな生きものたちの、いっときの大宴会を描いた物語絵本。どんな内容なのでしょう。

NEXTプラチナブックとは…?

絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。

advertisement

そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。

深くて濃い闇の中で『クジラがしんだら』

クジラがしんだら

作:江口 絵理絵:かわさき しゅんいち監修:藤原義弘

みどころ

ここはふかーく暗い、海の中。まっくら闇がどこまでも続き、なかなかエサにありつくこともできない深海。そんな場所でも生きものたちが日々を過ごしています。

「もう なんかげつも、なにも たべてないよ」

と、その時。

頭上におちてきたのは、何十年もの長い一生を終えた、大きなマッコウクジラ! 命を終えたクジラの体は、長ければ100年にもわたりさまざまな生き物の命を支え続ける大ご馳走となるのです。

舞台となっているのは、昼間でも光が届かない海の底。食べものをじっと待つ生きものたち。

クジラがおちてきた!

ただよってくる美味しそうな肉のにおいをかぎつけ、真っ先に駆けつけたのは鋭い歯を持つユメザメ。緑の目をゆっくりと見開き、クジラの厚い皮膚を食いちぎります。次に大量にやってきたのは、コンゴウアナゴたち。さらに、タカアシガニやウニ、グソクムシなどの小さな生き物たちが続き、半年もたつとあっという間に食べつくされていきます。やがて骨だけになると、そこにやってくるのは……?

深海という厳しい世界に生きるユニークな生きものたちの、いっときの大宴会を描いたこの絵本。クジラの死骸を中心に形成される特殊な生態系は「鯨骨生物群集(げいこつせいぶつぐんしゅう)」と呼ばれるのだそう。

全てを食べ終わってしまった後。50~100年もの途方にくれるような長い時間、この生き物たちはどんな気持ちで時間を過ごしていくのでしょう。そこには、想像もしたことのなかった驚きの物語が存在していたのです。

数多くの動物・自然に関する本の執筆を手がけられてきた江口絵里さんが紡ぐ物語を、更にイメージを大きく広げてくれているのは、かわさきしゅんいちさんの描く絵。美しく精緻でいながら、とてもドラマチック。いつまでも印象に残るような場面が続きます。監修は国立研究開発法人海洋研究開発機構の藤原義弘氏。知れば知るほど、もっと知りたくなる……不思議な魅力にあふれた絵本です。

 

編集長のおすすめポイントは……

深くて濃い闇の中に思いを寄せてみる

この物語で描かれているのは、マッコウクジラの体という夢のご馳走を目の前にした深海の生きものたちの大饗宴。見たことのないその出来事に驚き夢中になりながらも、ふと気づくのです。全てを食べ終わったあと、次にクジラが降ってくるのは……? 出会うことのできる確率は? そこに流れる時間とは? 味わったことのないほど、途方もない気持ちになってきます。けれど彼らの子孫は残っているのです。深くて濃い闇の中に思いを寄せてみる。そんな体験ができるのも、この絵本を読んだからこそですよね。

磯崎 園子(いそざき そのこ)

絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。