『暗殺教室』作者とnendo代表・佐藤オオキが語る、「自分は大したことない」と認める“弱者戦略”とは?
更新日:2016/5/5

Eテレで毎週土曜午後10時から放送している『SWITCHインタビュー達人達(たち)』。毎回異なる分野で活躍する2人の達人たちが互いに仕事の極意についてインタビューし合う。そこでかつて、『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載していた『暗殺教室』の作者・松井優征さんと、ロッテ「ACUO」のパッケージデザインなどで知られるnendo代表の佐藤オオキさんが対談した放送回の内容が書籍化、『ひらめき教室 「弱者」のための仕事論』(集英社)が発売されました。
お互いの職場に行き、お互いの考える“仕事の極意”を語り合います。その日、松井氏と佐藤氏は初対面とは思えないほど意気投合し、お互いの共通点や仕事術について熱いトークを交わしました。
今や『暗殺教室』が大ヒットし、売れっ子作家となった松井優征さんは、「自分には才能がない」と言い切ります。
松井 新人のころからですね。絵が上手い人がいっぱいいる中で、自分の漫画は見映えがしなくて、「まあおもしろいけど……」くらいで終わってしまう。そこで自分には才能がない。他に天才はゴロゴロいるんだと自覚するところから、本当の意味で漫画家人生が始まったんだと思います。
一方、日々400件の案件を同時進行すると言われている人気デザイン会社nendoの佐藤オオキさんも同様に、「自分には才能がない」と言います。
佐藤 デザインって、たぶん右脳型、左脳型タイプがいて、完成やセンスで戦える人がいるんです。ヨーロッパに行くと、ペンを手にした瞬間、魔法のように美しい曲線を描いちゃうような天才がゴロゴロいる。僕はそれを見て、「あ、自分にはできない。これは敵わないな」と最初に思ってしまった。
はたから見れば、才能にあふれ輝いているように見えるお2人。でも、彼らは「才能がない」ということを自覚しているからこそ、“戦略”を立てて立ち向かっているのでした。
「自分には才能がない」と思うことって、とても勇気のいることですよね。でも、世の中天才ばかりがゴロゴロしているわけではありません。むしろ、才能がないことを知り、適切に努力してこそ成功はあるのかもしれません。
対談の中で、2人は以下のように語っています。
松井 自分の適性がわかりだすのは、二五歳を越えたぐらいじゃないですか。そのためには鼻をへし折られる時期を越えて、「あ。俺は世界の主人公じゃないんだ」と気づく必要がある。
佐藤 早く気づくには、鼻をへし折られる環境に自分を放りこむことができるか、ですよね。まったく自分がやったことないことをやるのは怖いし、自分より優れた人たちがいる場所って積極的に行きたくない。でもそこに飛びこめると、「自分って大したことない」と学べる。
圧倒的に才能にあふれている人たちがいる場所に自ら飛び込んでいく。もしかしたら痛い目を見るかもしれない。でも、そこで身の丈を知るからこそ、弱者としての戦略を練ることができるのかもしれません。
違うフィールドで戦いながらも、慢心せずに戦い続けるお2人の対談は刺激たっぷり。放映されたものだけではなく、書籍化にあたり後日改めて対談した分も盛り込まれています。「仕事ができない」と悩んでいる方は、ぜひ突破口を探しに読んでみてはいかがでしょうか。
文=園田菜々