「あいつは話を聞いてない」――こんな愚痴を言うのは、仕事がデキない人
公開日:2018/1/23

■仕事にコミュニケーションはつきもの
仕事では「コミュニケーションが大切だ」とよく言われます。
それはそうですよね。どんな職種、業界でも、ひとりで完結する仕事はほとんどありません。人と人とが関わり、チームや組織をまたいで仕事が進みます。そして、その際には必ずコミュニケーションが発生します。
もちろん例外はあります。ごくごく簡単な仕事だったり、相手とツーカーの関係だったりする場合には「あ・うんの呼吸」で「あれやっといて」というレベルのコミュニケーションでも問題は起こらないでしょう。
しかし、多くの仕事ではそうはいきません。
特に、
・関係部署、関係者が多い
・プロジェクト期間が長い
・仕事内容が複雑
という場合は、より一層、コミュニケーションの質が仕事の成果を左右する重要な要素になります。
■「伝える」と「伝わる」は違う!
それでは、なぜコミュニケーションが大切なのでしょうか。
コミュニケーションミスによって「時間」と「品質」を失うからです。
たとえば、クライアントに資料を提出することになりました。この資料の作成を後輩に依頼したとしましょう。このとき、作る資料の内容についてしっかりコミュニケーションを取らず、自分が期待しているレベルより低いものが上がってきたら、それは「品質」を失ったことになります。
しかし、クライアントにはレベルの低いものを提出するわけにはいきません。もう一度作り直すよう指示しますが、今度はやり直しをするための「時間」を失うことになります。
もう一度資料ができたとしても、望んだレベルに達しているとは限りません。作り直しのために余計な時間がかかり、提出の期限は迫っています。そうするとレベルを上げきれないうちに期限を迎えることになり、「品質」を失います。
コミュニケーションミスは、なぜ起こるのでしょう?
それは、「伝える」ことで事足れりとしてしまっていることに原因があります。
単に「伝えた」からといって、それだけで自分が期待した成果を得られることはありません。自分の伝えたいことが相手に「伝わる」ことで初めて結果が出るのです。
■コミュニケーションミスの責任は「発信者」にある
このように書くと当たり前のように聞こえますが、仕事の現場ではこれを意識できていない人がかなりいます。よく見られるのが
「資料作成の指示をしたのに、全然わかっていない」
「期待した内容の資料ができてこない」
などと愚痴るケースです。
でも、悪いのは本当に受け手でしょうか?
指示が曖昧だったり、わかりにくかったりしていませんか?
資料に入れるべきデータについて、ちゃんとコンセンサスを取っていましたか?
どのような図版を使用するか、確認していたでしょうか?
いくら自分が「伝えた」と思っていても、相手に伝わっていなければ成果を得ることはできません。「絵に描いた餅」で終わってしまいます。
発信側と受信側が別人格である以上、完璧に伝わることはありません。これは仕方のないことです。
大切なのは、そのことを前提に、コミュニケーションミスを「できるだけゼロ」に近づけようとすること。これが、コミュニケーションミスによる「時間」と「品質」のムダを少なくする最良の方法です。
木部 智之(きべ ともゆき)
日本IBMエグゼクティブ・プロジェクト・マネジャー。横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。2002年に日本IBM にシステム・エンジニアとして入社。入社3年目にしてプロジェクト・マネジャーを経験。その後、2006年のプロジェクトでフィリピン人メンバーと一緒に仕事をする機会を得る。英語はもちろん、日本語も含めていくつもの言語を巧みに操り、かつ仕事も優秀な彼らに衝 撃を受け、自分はグローバルに通用する人材なのかと自問自答した。 それ以来、いちビジネスパーソンとして世界中どこでも通用するスキルを身につけることを追求してきた。2009年に役員のスタッフ職を経験し、2010年には最大級の大規模システム開発プロジェクトにアサインされ、中国の大連への赴任も経験。日本と大連で500人以上のチームをリードしてきた。プロジェクト内で自分のチームメンバーを育成するためにビジネススキル講座を始め、そのコンテンツは社内でも評判となった。著書に『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』『複雑な問題が一瞬でシンプルになる 2軸思考』(いずれもKADOKAWA)がある。