水野良×矢野俊策×畠山守――豪華すぎる制作陣が贈る『グランクレスト戦記』はファンタジー好き垂涎ものの傑作!!
公開日:2018/3/8

流浪の君主と孤高の魔法師が出会ったとき、戦乱に充ちた大陸に変革の風がもたらされる――。
国内ファンタジーノベル界のパイオニア、『ロードス島戦記』の水野良が世界設定と小説を手がけ、テーブルトーク・ロールプレイングゲーム(TRPG)、コミカライズ、そして現在好評放送中のTVアニメと、様々な形でシェアードワールドを広げている『グランクレスト戦記』。
世界を二分する勢力〈幻想詩連合〉と〈大工房同盟〉が熾烈な戦いを繰り広げるアトラタン大陸。理念なき君主たちに失望する天才魔法師シルーカは、故郷を圧政から解放するべく旅を続ける青年テオに、理想の君主としての姿を見出す。主従関係を結んだ彼らは、やがて大陸全土の運命を変える存在となっていく。
剣と魔法のファンタジーであり、戦記ものであり、ボーイ・ミーツ・ガールの物語でもある。中心となるのは主人公テオと彼を支えるシルーカだが、2人を取り巻く個性豊かな登場人物が織り成すドラマも魅力的だ。
愛し合いながらも連合と同盟、それぞれの盟主となって対立するアレクシスとマリーネ。君主として、人間として、テオに大きな影響を与える伯爵ヴィラール。最初の敵であり、やがてテオの盟友となる君主ラシック。テオとは真逆の在り方で君主としての道を歩む太守ミルザー。
主要キャラクターだけでも実に30人以上が登場し、それぞれの立場と信念、美学による戦争が華麗に、熾烈に、そして残酷に展開。「戦記ものとは、死にざまを描くこと」と原作者が語るように、物語の進行と共に多くの人物が倒れていくのも最近のファンタジー作品になくハードだ。
全10巻の小説を2クールで描き切るアニメ版にも、原作のエッセンスは鮮やかに反映されている。戦いを通して変化していく人間関係、アニメーションならではの臨場感ある戦闘シーン、各キャラクターの生きざまと死にざま――。
プロジェクト・グランクレストより水野良と矢野俊策が“シリーズ構成”として参加し、『昭和元禄落語心中』『ローゼンメイデン』などを手がけてきた畠山守が監督。フルショットとロングショットを効果的に使った映像、ファンタジーとリアリティの絶妙なバランス、歴史を縦軸に個人を横軸として描く構成と、壮大な歴史絵巻を思わせる演出に胸がわくわくさせられる。
小説の最終巻が3月に発売され、アニメのほうもシーズン1のクライマックスへ間もなく突入する。大河ドラマのように重厚感ある本格戦記ファンタジーに、是非ふれてほしい。

文=皆川ちか