【W杯まであと2ヶ月】遠藤選手の「シンプル思考」 必要なのは先読みする力だった…
公開日:2018/3/27

W杯まで約2ヶ月、メディアのサッカー報道も増えてきた。そんな中、3度のW杯を経験し、Jリーグの第一線で活躍し続けている遠藤保仁選手の著書『「一瞬で決断できる」シンプル思考』(遠藤保仁/KADOKAWA)が話題になっている。遠藤選手は、ピンチから脱し、チャンスを掴む素晴らしい力を持っている。その力を発揮する上で、不可欠な能力は「先を読む力」だそうだ。だが実はこの力、サッカー選手だけのものではないという。日々の仕事や暮らしにおいても役立てられるこの力を、どうやって身につければいいのか。それを本書の中で、教えてくれている。
先読みをする上で大切なことは、まず少し先の未来をイメージすること。いつもと同じことをしているだけでは、先を読むことはできない。いつもと同じように感じる状況において、いつもと違う予測をしてみる。これにより、判断力とスピード感が高まるという。
柔軟な考え方こそが、未来をイメージさせ、照らしてくれる。そのために大切なのは、常にどんな出来事にも、臨機応変な対応ができるようになることだ。そしてそのために必要なのは、遊び心だと言える。
遊び心は、柔軟な発想力を鍛えるうえで欠かせない。そして、「アイデアが湧く=選択肢が増える」ことにつながる。
ガチガチに固まっていたのでは、いいアイデアを拾うこともできないだろう。それどころか、いつもと違う状況を恐れ、何も見出すことができないかもしれない。
そして「先読み」は、いつもうまくいくわけではないということも覚えておく必要がある。むしろ、「先読み通りにいくことのほうが珍しい」とのこと。だが遠藤選手は、物事がうまくいかなかったときの受け止め方が、他者とは違うのだ。それこそが、先読み力の極意と言えるだろう。
たとえば、パスを出そうとしていたスペースに敵の選手が入ってくることもあるし、僕が出したいパスに味方の選手が反応してくれないときもある。しかし、先読みが外れても、ゼロに戻るだけである。先読みが外れたからといって、相手に負けたことにはならない。先読みが外れたなら外れたで、すぐさま別の選択肢を模索し、状況に応じた最善のプレーをするだけである。
順調に事が進まなかったとき、いかに素早く頭を切り替え、態勢を立て直すか。それこそが大切なのだ。人は、うまくいかなかったことを後悔し続け、誰かのせいでこうなった、と責めてしまいがちだ。
だが遠藤選手は、試合中に自分の思い通りの流れにならなかったとしても、「それはそれ」と受け止め、次へと向かう。一つのプレーのみをイメージしていたのでは、それがうまくいかなければ、そこで全てが終わってしまう。だが、「そんなときはこれ」と、いくつものパターンを想像することができれば、すぐに次の行動に移ることができる。これが「先読み」する力なのだ。
ピッチに立つメンバー全員が、自分にチャンスを与えてくれるためだけに動いているというわけではない。一人ひとりが違うパターンで、「これこそがベストだ」と考え動いているかもしれない。大切なのは、状況に応じて臨機応変な動きをすることだ。遠藤選手のような切り替え方ができれば、どんな時でも全力を出すことが出来るだろう。
遠藤選手のプレーで、私が以前から記憶しているものに「コロコロPK」がある。ゴールキーパーの動きを見極めつつ、ペナルティーキックをゴロで蹴るのだ。「まさかそんな力の抜けたキックをするはずがない」。そう信じているゴールキーパーの裏をかく攻撃だ。
予想を完全に裏切るそのプレーには、当時私も驚いてしまった。これは、「相手の裏をかく」ことを的確に行なったプレーだったのだ。
ゴールキーパーの動きをギリギリまで観察した、根競べ攻撃。遠藤選手自身は、もう飽きたのでこれはしないと言うが、誰でも簡単にできることではない。決まった枠に収まらないからこそ、チャンスが生まれる。遠藤選手ならではの技術を感じた。
「楽しいからこそ夢中になれる」と言う遠藤選手。それは人生でも仕事でも同じとのこと。サッカーも「楽しいからこそ」やっているのであり、うまくもなっていく。
遠藤選手にも、ただがむしゃらにプレーしていた若い時代がある。そして今は、自信を無くしている仲間のために、力になろうとする遠藤選手がいる。
こんな先輩に支えてもらえたなら、どんなに伸びていけることだろう。サッカーのプレーだけでなく、自分の暮らしにも役立つ44の考え方のコツを身につけて、この人生を輝かせていこう。
文=松田享子
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