「腹にドスンとくる衝撃を受けた」狂気の戦場を描いた『ぺリリュー-楽園のゲルニカ-』5巻に反響続出!

マンガ

更新日:2018/8/6

 武田一義氏による漫画『ぺリリュー -楽園のゲルニカ-』(白泉社)の5巻が、2018年7月27日(金)に発売された。太平洋戦争末期のペリリュー島を舞台にした同作は、読者から「多くの人に読んでほしい」「学校や図書館に置くべき名作」と反響を集めている。

 作者の武田氏は優しい絵柄と丁寧な語り口で描かれる作品が特徴の漫画家で、これまで自身の闘病体験を綴った『さよならタマちゃん』や疎遠になっていた親との関係性を描いた『おやこっこ』を発表してきた。また同作の原案協力には、太平洋戦争研究会に所属し、数多くの従軍経験者への取材を行ってきた平塚柾緒氏が。

 同作は、太平洋戦争末期に凄惨な戦闘が行われたペリリュー島が舞台。第1巻は、漫画家志望の兵士・田丸が洞窟掘りを行っている場面から始まる。サンゴ礁の海に囲まれ、美しい森に覆われたペリリュー島。しかしそこは、東洋一と謳われた飛行場を奪うために襲い掛かる米軍兵4万と「徹底持久」を命じられた日本軍守備隊1万が殺し合う、狂気の戦場だった―。

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 第1話で印象的に描かれているのは、田丸の友人・小山に関するエピソードだ。戦場から送られてきた父の最期を記した手紙のように、勇敢に死にたいと語っていた小山。しかし小山は、警報に驚き、足を滑らせて死んでしまう。小山の死を悲しんでいた田丸だったが、田丸が漫画を描いていたと知った上官から小山の最期をねつ造するよう命令を受ける。家族に伝える手紙の中くらいでは勇敢な死を、という上官の想いに共感して小山の家族への手紙を書き上げた田丸。しかしその帰り道に田丸は、小山から聞いていたちょっと嘘くさいほど勇敢な小山の父の死を思い出す。

 凄惨で身の毛がよだつような戦場の様子をリアルに描いた同作だが、この作品は登場人物たちが可愛らしい“三頭身”で描かれているのも特徴。全体的に柔らかで可愛らしいタッチに、読者からは「かわいらしい絵柄で描いているからこそ、悲惨さが伝わってくる」「絵柄で身構えないから『戦争っていやだ』とストレートに思えた」といった意見が。

 今回発売された5巻では、新たな展開が描かれる。米軍の猛爆撃で瓦礫の島となったペリリュー島に再び草木が芽吹き始めていた。必死に食料を探しながらなんとか生き延びていた田丸、吉敷、小杉の3人。ある日そんな3人は、米軍の缶詰とともに地面に残された「伝令」を見つける。

 5巻を読んだ人からは、「凄惨な戦闘描写はほぼない巻だったけど、違った意味で腹にドスンとくる衝撃を受けた」「漫画ながらエグいなと心の底から思える。戦争の重さに押しつぶされそう」「戦争の悲惨さは、人が生きて培ってきた価値観や生きざまを、全て消し去ってしまうことだと痛感させられた」と反響が続出。

 また、「図書館戦争」シリーズで知られる有川浩氏は、同巻の帯に「人の倫理をすりつぶす『戦争』の歯車。たかが一本の『ペン』が何を為す?――『ペン』は私たちにこの物語を語る。」とコメントを寄せている。

 「戦場」で生きた若者たちは、いったいどのような未来を迎えることになるのか。最後まで彼らの姿を見届けよう。