幸せは作れる!?好きな人との電話で分泌されるホルモン「オキシトシン」とは
公開日:2019/1/19

オキシトシンとは、下垂体後葉から分泌されるホルモンのことだ。分娩時に子宮を収縮させたり、乳腺の筋繊維を収縮させて乳汁分泌を促したりする。近年は「幸せホルモン」や「愛情ホルモン」などと呼ばれ、人の心を満たす役割が注目されている。触れ合いや寄り添いをすることによってオキシトシンは放出され、安らぎを得たり、良好な人間関係を築いたりする。
『オキシトシンがつくる絆社会 安らぎと結びつきのホルモン』(シャスティン・ウヴネース・モベリ:著、大田康江:訳、井上裕美:監訳/晶文社)の著者は、スウェーデンの生理学者。オキシトシン研究の世界的権威のひとりである。本書では安心や幸福をもたらすオキシトシンのシステムについて解説している。
オキシトシンは女性にだけ分泌されるホルモンではない。近年は男性への精神的な影響にも注目されている。オキシトシンは、落ち着き、不安の軽減、治癒力の促進などの安らぎを生み出す。子育てにおいて、親子の関わりを強め、絆を深める役割があるのはもちろん、大人が生活の中で受けられる効果もある。たとえば、恐怖や緊張を緩和したり、学習を促進したり、ストレスを減らしたりする。
オキシトシン効果は「寄り添い」によって得ることができる。親子や恋人同士のスキンシップはもちろん、好きな人との電話、治療の現場でのマッサージやタッチング、イヌなどのペットとの暮らしでも得られる。そもそも、オキシトシンの恩恵を得るのは人間だけではない。オキシトシンは哺乳類の共有物である。進化上、とても古い物質で、全ての哺乳類が持つ、科学的に同一の小さなタンパク質だという。
哺乳類が母親から手入れをされたり、安全な場所で仲間と過ごしたり、群れたり懐いたり、交尾をしたり、そういう「寄り添い」でオキシトシンは放出される。人間である私たちはしかしながら、現代では人と関わる時間が少なくなった。一方で、他者との競争は余儀なくされ、ストレスにさらされている。では私たちがオキシトシンの効果を得るためにはどうすればよいのだろうか?
著者によると、最も重要なことは「オキシトシンのシステムについてもっと知ること」だという。現代の生活様式が、オキシトシンの効果を損なってしまうことを意識していこう。赤ちゃんや子どもに寄り添って触れてあげること、自分の心地よいコミュニティに参加すること、高齢者にマッサージやタッチングなどをすること、イヌなどの動物を撫でること。これらは、する側もされる側にも、オキシトシンの効果をもたらしてくれる。
離れていてもやり取りが可能になった現代社会において、「寄り添い」の大切さに気づきながらも、家族などへの寄り添いに勇気が出ない人もいるだろう。身体の接触がなくても、すこしずつ心を通わせることで相手を安らげることはできる。まずは、知ることからはじめてみてはどうだろうか。
文=ジョセート