火を吹く修道女からサイズ違いのスマホケースまで…! 「なんでコレ買った!?」を詰め込んだ爆笑エッセイ集
公開日:2019/2/21

たまたま覗いたお店や旅先で、思わず衝動買いをしてしまった経験は誰にだってあるはず。しかし、そうした購入品はその時、魅力的に見えても、ふと我に返ったとき「どうしてこんなものを買ったんだろう…」と、後悔してしまうことも多い。そんなトホホアイテムに関するエピソードを軽妙かつ丁寧に紹介している『大宮エリーの なんでコレ買ったぁ?!』(大宮エリー/日本経済新聞出版社)は、腹筋崩壊必至な1冊だ。
本書は、『日経MJ(流通新聞)』(日本経済新聞社)やWebに連載されていたエッセイを加筆・修正したもの。著者である大宮さんがつい買ってしまったトホホなモノたちが写真付きで紹介されている。
“あまり深いことを考えずに、こんなくだらねえもの買ってバカだなって思ってくれていいです。”
そう自虐する大宮さんの“愛すべきトホホアイテム”にはどんなユニークなエピソードが隠されているのだろうか。
■みんなが「いいじゃん」って思わないからこそ楽しい!
“どこで、私のスマホだ!俺のスマホだ!という色やら匂いやら愛着(これが一番大事)を出すかというと、“ガワ”なのである。”
そう話す大宮さんはスマホを相棒、スマホケースを相棒の洋服のようなものだと考えているため、スマホケースを変えることで分身の着せ替えを楽しんでいる。
現代人にとってスマホは、もはや自分の分身のような存在であるため、大宮さんと同じように、ガワを変えることで自分をアピールしている方も多いのではないだろうか。
だが、大事な相棒の洋服なのに、じっくり時間をかけずインスピレーションでビビっときたものを購入してしまうのが大宮流。時には「かわいい」という理由だけで、自分のスマホに着せられないサイズのケースを購入してしまったこともあったのだとか…。
“かわいいからって、うちの相棒着れないよ。孫にでもあげようという気持ちなのか?! まだ6sではないひと、いますかー?!”
本書を通じて、そう呼びかける大宮さんのチャーミングな一面に読者はほっこりさせられてしまう。
そんな風に、独自の視点で“モノ”を購入してしまう大宮さんは、ユニークなスマホケースだけでなく、一風変わったおもちゃにも惹かれてしまうよう。中でも、思わず爆笑してしまったのが、ロンドンで購入したという「火を吹く修道女のおもちゃ」。不思議な動きで走り回るという修道女のおもちゃは、銀色の小さな稲妻が口から出るというハイクオリティな1品。大宮さんは誰に何と言われようと、この奇妙なおもちゃを自慢に思い、大切にしている。
“最近思うのが、みんながいいじゃん!て思わないから楽しいのかもしれない。自分だけがこいつの良さを知っている、みたいな。その醍醐味たるや。みんなは気づかない魅力。ライバルゼロ。みんな欲しくないから誰も持っていない。この優越感!”
そう力説する大宮さんにとっては、トホホな購入品たちは同時に、宝物でもあるのかもしれない。
■トホホアイテムに映し出される人間性がおもしろい
大宮さんが紹介する、モノにまつわるエピソードには彼女の人間性が映し出されてもいる。例えば、ぬいぐるみ。
大宮さんは昔、大きな白いくまのぬいぐるみを購入したが、家に帰った途端「私には似合わない…」と興ざめしてしまったことがあったそう。それ以来、独自のルールを設け、ぬいぐるみを買わないようにしてきた。
だが、そんな大宮さんの心を奪ったのが絶妙にダサい謎のぬいぐるみ。耳も丸く、顔は完全にクマなのに、なぜかツノが生えているその生物に大宮さんは一目惚れをしてしまったのだ。
“たぶん、クマ作りがこの会社のメインのお仕事で、いつも作っていたけれど、クリスマスシーズンになり「よし!今だけ、あのクマに、ツノつけて、トナカイとして売っちゃおう!」というノリになったんだと思う。”
謎に満ちたフォルムの理由も、こんな風に独自の視点で妄想。本作にはこうした大宮節がたくさん溢れているため、読者は1ページめくるごとに笑顔になれてしまう。
また、「スピリチュアルな?カテゴリー」に収録されているエピソードからは大宮さんの知られざる一面が垣間見られて、おもしろい。中でも、「たくさんの植物」に記されている植物愛には、ほっこりとさせられる。「私の暮らしには木が必要」「木のおかげでうちは精霊だらけ」と語る大宮さんのピュアな価値観に、思わず目尻が下がってしまうのだ。
コミカルな口調で、ひとつひとつの購入品にまつわる思い出を教えてくれる大宮さん。彼女のエッセイを読んでいると、どんなモノにも思い出がちゃんとあったことに気づけ、身近にある、くだらなくも愛しいトホホアイテムへの愛着も込み上げてくる。
「いつも衝動買いして、後悔してしまう…」「気にいったものを購入しても、周りからの反応が薄い…」そんなモヤモヤを抱えている方は本書に共感しながら、遠き日に購入した愛すべきトホホアイテムを探してみてほしい。
なお、本書には、オモテ側や裏側から本を斜めにすると文字が浮かび上がるという驚きの仕掛けもあるので、そちらもぜひ楽しんでみてはいかがだろうか。
文=古川諭香