藤本さきこの本喰族!!「数学」という言葉から見つけた1冊『博士の愛した数式』小川洋子/連載第1回
公開日:2019/4/21

私にとって本は、食べて吸収し細胞にするもの。
食べることと同じくらいを作っていく。
食物が肉体のエネルギーを作るなら、書物は魂のエネルギーをつくる。
ひとつだけ違うことは、魂には「お腹いっぱい」という感覚がないこと。
お腹いっぱいにするために読むのではないのだ。
この連載「本喰族」では、読んだ本の中から頭に残っている「言葉」から次の本をリレー形式で検索し、魂がピンときた本をどんどん喰っていきたいと思います♡
『博士の愛した数式』小川洋子

初回は、最近一番気になっている言葉「数学」から見つけたこの本。
元数学の博士と、シングルマザーの若い家政婦の物語。
博士は事故の後遺症で80分ごとに 記憶が消去されて行く。蓄積された記憶は17年前でストップし、更新されない。毎朝「初 めまして」から博士の身の回りのお世話が始まる。どれだけ博士と親しくなり心を通わせ たような気がしても、次の日には「無かったこと」になってしまう。
毎朝「初めまして」で出会う博士は、数字で家政婦との繋がりを見出そうとする。家政婦も次第に数字の持つ意味や繋がりを見つけ、数字の世界を味わっていく。
見える世界を支える偉大な力は、見えないところにある。数学はその世界…、即ち「真理」を証明する。今まで見える現実ばかりに振り回され人生に疲れていた家政婦は、数学を通して見えない世界に煌めきを見つけるようになる。
ある日、家政婦の息子は夏休みのキャンプに出かけた。
家政婦は、息子を産んでから初めて一人になった。仕事中、夏の豪雨と雷が始まった。息子が登っているはずの山が心配で仕方がなく、仕事に身が入らない。
家政婦は、「息子がいないと、心の中が空っぽになったような気がする」と博士に打ち明けた。
博士は言った。
「空っぽとは、つまり0を意味するのだろうか? つまり今、君の中には0が存在する、と言うことになる」ここを読んで、初めて「0」と言う数字があるおかげで、無いものを「無い」ままではなく、「無い、が在る」と存在させることができることに気づいた。
お財布の中に0円、だとしても、「0円がお財布にある」ことになるし 今日は良い出来事が0個だった、としても「良い出来事が0個の日があった」ことになる。
お金が無い、良いことが無い、という「無い」ままの表現ではなく0のおかげで全て「あ る」表現ができるのだ。 このことが、私たちの人生をどれほど素晴らしいものにしてくれていることか。
「0」という数字に心から感謝した。
数字に感謝することができるなんて、衝撃だった。
次は「雷」という言葉で美味しそうな本を探します。
文=藤本さきこ
(プロフィール)
藤本さきこ●ふじもとさきこ/株式会社ラデスペリテ 代表取締役
1981年生まれ、青森県出身。累計3万人以上を動員した「宇宙レベルで人生の設定変更セミナー」を主宰する人気講演家。4人の子の母でありながら、実業家としても活躍。1日20万アクセスを誇るアメーバのオフィシャルブロガーとしても知られる。友人と共同創業した「petite la' deux( プティラドゥ)」は実店舗からネットショップへ事業形態を変更。布ナプキンや化粧品、香油、ハンドメイド雑貨を販売。そして、「Laddess perite(ラデスペリテ)」では、自身が開発したオリジナルの万年筆やノートやスタンプ、自ら選んだ文房具を発売し、いまや年商3億円を超える規模に拡大。自らの人生を「明らめた(明らかに見た)」結果、宇宙の叡智に触れる経験をして以来、「女性性開花」をテーマに人生の在り方を追求。著書『お金の神様に可愛がられる』シリーズ3部作はベストセラーになり、『お金の神様に可愛がられる手帳』(いずれもKADOKAWA)は、4年連続で刊行している。