人生をゲームのように楽しむ技術があるって本当? 精神科医・ゆうきゆうが説く「ゲーミフィケーション」とは
公開日:2020/7/15

「ゲーミフィケーション」。正直、初めて聞く言葉だった。日本大百科全書を繙くと、次のような記載があった。
“ゲームソフトにみられるプレーヤーを楽しませる発想や手法、デザインのくふうなどを一般的な分野に応用し、人を引きつけたり、興味をかりたてたりする効果を取り入れることをいう“
『マンガで分かる心療内科』は、ゆうメンタルクリニックの人気コンテンツの一つだ。ギャグテイストの漫画で依存症治療、ADHD、うつなどについてわかりやすく解説され、2010年からは雑誌『ヤングキング』(少年画報社)でも連載が始まった。
1巻から読んでいたので、もう19巻になる『マンガで分かる心療内科19ゲーミフィケーション編』(ゆうきゆう、ソウ:著/少年画報社)を読み感慨深く思っていた。しかし、心をケアする新しい手法がまた登場するとは予想外だった。ちょうどこの本を手にした頃、私は生まれて初めてゲームにのめりこんでいた。ゲーム禁止の家庭で育ったので、私にとって初めての経験で、いくらゲームしても飽きない。
ゲーム中毒になってはいけないが、ほどほどにやると良い息抜きになる。
本書の解説者であり、ツッコミ役でもある心理士の心内療はゲーミフィケーションについてこう述べる。
“ゲームはいくらやっても疲れません!
仕事や勉強も同じように楽しむのがゲーミフィケーションです!“
仕事が、ゲームだったら。イメージするだけで夢のような話である。
タスクをゲームだと思って楽しむ方法はたくさんあるようだが、本書のキーワードは「時間制限」だ。今日からすぐできる「チクタク・テクニック」についても紹介されている。
それは、25分集中し、5分休憩するというイタリア発祥の時間管理術「ポモドーロ・テクニック」だ。友人に話すと「休憩多すぎない?」と笑われてしまったが、実践してみたところ「25分頑張れば休める」と思うと、いつもより作業の効率が上がった。
解説役の心内療はこう話す。
“『25分やる』というのはウラを返せば
『25分しかできない』ということでもあります”
“すると制限時間があることで
仕事や勉強がゲームのように盛り上がるわけです“
この原稿を書いている今も、私はポモドーロ・テクニックを使っている。25分経つのが楽しみで、いつもより筆が速くなる。
そして本書でおすすめされているのは、「チクタク」などの音を聴きながら作業し、時間が来たら気づくようにアラームをセットすることだ。今はポモドーロ・テクニック用の時間管理アプリやフリーソフトがたくさんある。
そういえば私が今のめりこんでいるゲームも時間制限がある。あと何秒、とタイムリミットが近づくと集中力が上がっていく。これは仕事や勉強にも応用できたのだ。また、しっかり集中した後、休憩時間をしっかり休むことによって脳が疲れを感じなくなるという効果まである。
その他、本書ではゲームが楽しい理由を『可視化』『目標(ミッション)』『報酬』の三つに分け、これが日々のタスクでどう生かせるかについても時間管理の観点から解説されている。この本は、「最近疲れているなあ」と感じている人にとって宝物になるかもしれない。
文=若林理央