“発達障害”は親が悩むな!?『うちの子、個性の塊です』は娘と親との9年の記録
更新日:2020/8/27

“発達障害”…子を持つ親なら気になってしまうワードだ。本作『うちの子、個性の塊です』(SAKURA/すばる舎)は、発達障害の親が綴った9年の記録である。
一見同じ悩みを持つ親に役立つ…と思いきや、読み終えてレビューしようとする今、「子育てを始めた親全てに読んでほしい」と感じている。理解できているようで理解できていない、「子どもの成長をどう見守るか」という命題が書いてあると知ったからだ。
本作は既に診断された子、「グレーゾーンじゃないか」と心配な子、彼らの親向けだけではないのである。もちろん、いわゆる療育を実践的に知ることができるし、監修した医師、井上雅彦氏とともに書かれた300ページ以上の内容は、最新の知見、情報量もたっぷり。どんな家庭にもあてはまるものではないが、発達障害や子育てと向き合うヒントになることは間違いない。
作者は沖縄の人気ブロガーSAKURAさん。彼女が個性の塊(かたまり)である娘さんと向き合った9年間を、挿絵と4コマ漫画を交えながら、苦しいことも含めて前向きに、ユーモラスに綴っている。
娘が発達障害? そのとき親が考えたのは「今でなく未来のため」
幼い頃から母親・SAKURAさんに無関心だった長女・あーさん。「おとなしくて手がかからない」と思っていたところ、2歳半時に発達支援センターで「この子はお母さんに執着がない…興味がない、これは問題です」といわれてしまう。発育の遅れを認識した母は、娘の療育を始めた。ちなみに療育とは以下のように定義されている。
療育とは障害のある子どもの発達を促し、自立して生活できるように援助することをいいます。
引用元:LITALICO発達障害ナビ(井上雅彦)
SAKURAさんは、支援センターで子どもたちにまじってあーさんと一緒に遊び、気持ちを共有していった。そして4歳のとき、今度は「自閉症スペクトラム障害」と診断される。ここで、発達障害の3つのタイプを紹介する。
自閉症スペクトラム障害(ASD)
特徴:先天的なもの、社会性を身につけるのが苦手、興味が限定的。2013年以降、自閉症、アスペルガー症候群などが含まれた、スペクトラム(連続した)障害であるという見方が採用されている。
注意欠如・多動性障害(ADHD)
特徴:不注意と落ち着いて止まっていることが苦手な傾向がある。
限局性学習障害(LD)
特徴:読み書き、会話、数字の計算などが困難で、学習到達度が平均から最大2年ほど遅れる。
診断後、SAKURAさんはもちろん落ち込んだ。彼女はただでさえ、あーさんをほかの子と比べがちだったからだ(多くの親はそうだろうが…)。ただ、そこでSAKURAさんは前向きに思いなおす。
娘のできないことばかり見つけて、比べて……。娘に対して失礼じゃないか!
あーさんは心配だが、どこか恥ずかしいと感じている自分に気づくSAKURAさん。とにかく娘にプラスになるよう、夫と二人で目標を立てた。自分たちは一生そばにいて助けてあげることはできない。あーさんには一人で考えて行動しなければならない時がくる。だから「娘が社会に出た時に自分で稼ぎ、生活できるようになるよう育てる」という目標だ。大事なのは今ではなく未来なのだ。
どんな個性ともポジティブに向き合い成長させるためには?
『うちの子~』は9年間の療育の記録が詳細かつ具体的に書かれている。“試みた言語トレーニング”“通常学級へ入学”“特別支援学級への転籍”“放課後等デイサービス”など、これらの内容は同じ境遇の親にはためになり、励みになるはずだ。
そして本作のポイントは、全体的なトーンがポジティブであるということだ。SAKURAさんは「自分が焦っても娘は早く成長するわけもない、悩む暇があったらやれることをやる」と考えた。言葉を覚えるための言語カードを自作したり、朝起きてからやる行動を描いた準備カードを用意したり、タイムスケジュールがひと目で分かるよう書き出したりもしている。
彼女がポジティブに行動できるのは、5歳の健診時、主治医から以下のようにいわれたからだという。
発達障害のある子は、その個性がたくさんあるから目立つ。だから娘さんは個性の塊(かたまり)なんです。
この言葉で「これがあーさんの個性、これがあーさんなんだ」と認められたSAKURAさんは、娘のちょっと変わった行動も楽しい気持ちで受け入れられるようになった。これは子どもも親もラクになって、笑顔でいるための大きな手がかりだろう。
親は子に個性があったほうがいいと考える。ただそれは親の型の中での個性を求めがちである。だからうまくいかないことが多いように感じ、親は悩むのだ。
子どものどんな個性も認めて、自立して生きていけるよう成長させるミッション。本書に書いてあることは実は、子育て全般にあてはまることなのだ。
文=古林恭