超大型巨人になるアルミン、次々に敵を倒す進撃の巨人エレン…揺らぐ正義と悪/アニメ「『進撃の巨人』The Final Season」第7話
公開日:2021/1/26

「『進撃の巨人』The Final Season」第7話。今回のエピソードで印象深いのは、マーレ側の視点で仲間が襲われることの悔しさと悲しみを描いていることだ。
硬いものをかみ砕く歯を持った「顎の巨人」ポルコは、表情と行動でそれを示す。昔、彼は兄マルセルの「弟を死なせたくない」という思いから、知性を持つ巨人になることが叶わなかった。長い間、パラディ島から帰還する兄を待ち続けたが、兄はライナーをかばい巨人だったユミルに食われてしまっていた。結局ポルコは、そのユミルを食べることで顎の巨人を継承したのだった。ポルコは兄の死の原因であるライナーに複雑な感情を抱きつつも、彼が戻ってきた後は仲間として共に敵国と戦った。
巨人化した自分に襲い掛かってくるパラディ島の兵士たちを見て、ポルコは衝撃を受ける。
「人間の姿のままおれを殺す気か」
マーレに突如現れた「進撃の巨人」エレンに続き、戦闘力に長けた一族アッカーマンの血を継ぐリヴァイとミカサ、そして訓練を積んだ調査兵団の参戦によって、マーレの街は壊滅的な被害を受ける。エレンたちパラディ島勢力の狙いは、「戦鎚の巨人」の力を手に入れることだ。戦鎚の巨人は既に余力を使い果たし、後は本体を食べるだけなのだが本体は硬質化した結晶体の中にいて、手が出せない。
激戦は続く。
だが「進撃の巨人」であるエレン以外は、いかに強くても人間だ。武器や燃料はすぐになくなり力尽きるだろうと、聡明な「車力の巨人」、ピークは予想する。
彼らは緊急事態で、一瞬忘れていたのかもしれない。4年前、パラディ島壁内の戦いで「超大型巨人」ベルトルトが奪われたことを。
マーレ側の人々は知らなかったが、アニメ『進撃の巨人』3期終盤でベルトルトを食らい超大型巨人になる能力を得たのはアルミンだ。アルミンは船に乗りマーレ軍に兵を送るための艦隊の隣に来ると、超大型巨人になり艦隊やマーレ軍が作っていた包囲網を焼き尽くした。
「これが君の見た景色なんだね、ベルトルト」
自分のせいで死んだ人たちを悲しそうに見つめながら、アルミンは震える声でつぶやく。子どもの頃、パラディ島の壁と自分たちの平和を壊したベルトルトの気持ちが理解できたのだ。だがそれはそれとして、パラディ島に住むエルディア人の命を救うため、アルミンは冷静に自分がたてた作戦を続行する。
一方、ポルコは仲間ベルトルトがパラディ島の壁内で殺され「超大型巨人」を奪われたことを嘆く時間も与えられなかった。今度は戦士長であり「獣の巨人」であるジークと、ピークが戦闘不能になる。
エレンが巨人化したとき、その場にいたライナーは、瞬時に戦士候補生ファルコをかばいながら自傷して鎧の巨人になろうとした。しかし長年にわたる悲惨な経験から生きる気力がなくなっていたため巨人化できず、今も意識を失っている。
空にはパラディ島勢力の兵士を救うための飛行船が飛ぶ。中には現在の調査兵団団長ハンジ、初登場のオニャンコポンという人物、そしてアルミンが人の姿に戻って乗っている。
マーレ側で戦える巨人はもはやポルコだけだ。彼は悲しみと怒りでエレンに飛び掛かる。しかしエレンは顎の巨人の強靭な歯を利用して戦鎚の巨人の結晶体をかみ砕こうとする。
「嘘だろ…やめろ、やめろ、やめてくれええ」
ポルコの悲鳴も虚しく、エレンは戦鎚の巨人を食らう。次にエレンが能力を手に入れたいのは顎の巨人、つまりポルコだ。
外で戦闘を見ていた戦士候補生のガビとファルコは、友だちのゾフィアやウド、慕っていた大人たちを数多く失った。だが彼らはまだ子どもだ。このままではポルコが殺される。救えるのはライナーだけだ。最後まで希望を捨てず叫ぶ。
「助けて!ライナー!」
力いっぱい叫んだ二人によって、ようやく「鎧の巨人」ライナーは立ち上がる。
息もつかせぬ展開とはまさにこのことを言うのだろう。次回予告では、戦闘が始まってから仲間の仇を討ちたいと願っていたガビが銃をかまえる場面が映される。マーレとパラディ島勢力、どちらにも大きな傷跡が残ることは間違いない。
文=若林理央