【ネタバレあり】『ONE PIECE 98』あいつらが強すぎるんだ! カイドウが絶叫した赤鞘九人男の討ち入りとヤマトが持つ航海日誌の行方は……?
公開日:2021/2/5

※本文にはネタバレを含みます。
“ひとつなぎの大秘宝”(ワンピース)を獲りに行くぞ!!!
ワンピースを手に入れて世界を征服したい、カイドウとビッグ・マムの四皇同盟(のちに殺し合う予定)。
討ち入りだァ~~~!!!
主君・光月おでんの無念を晴らしてワノ国を開国したい、錦えもん率いるワノ国の侍たち。
お前ら全員ぶっ飛ばしに来たんだ!!!“全面戦争”だ!!!
海賊王になるため、友達の国を救うため、四皇2人をぶっ飛ばしたいルフィとその一行。
様々な物語が描かれたワノ国編は、とうとうひとつへ集約する。討ち入りに勝つか、負けるか。複数の海賊団とワノ国の侍たちが入り乱れる大乱戦の勝者が、ワンピースへぐっと近づく!
『ONE-PIECE 98』(尾田栄一郎/集英社)の最大の見せ場は、やはりカイドウと錦えもん率いる赤鞘九人男の戦いだろう。
赤鞘九人男の討ち入りの瞬間、カイドウは驚愕した。並の攻撃ならば、傷ひとつ負わない無敵の身体。しかし彼らの攻撃を受けて、カイドウは悲鳴を上げた。
なぜ痛む!!!
なぜ刃が刺さる!!?
こいつらもおでんの流桜を!!?
ところが、さすがは世界最強レベルの猛者。ダメージを残した様子は微塵もなく、すぐに立ち上がり、不敵な笑みを浮かべて嫌味を吐いた。
20年を耐え忍び
――片や時を越えかけ回り……!!
よく兵を集めたもんだ
――だが海賊は裏切るぞ
負けるとわかりゃお前らを見捨てて逃げる
「四皇を前に敗戦が濃厚になれば、ルフィであろうが裏切る」と侮辱したのだ。しかし錦えもんも気迫では負けない。
ルフィ殿はお前らとは違う!!
彼はいつかこの海の頂点に立つ男!!!
拙者達が全員死のうが彼がいる!!!
「ワノ国」に必ず“夜明け”は来る!!
それが主君との約束ゆえ!!!
そして…ついに戦闘が始まった。「ウォロロロロ!!! 世界一の戦力を見せてやる!!!」と咆哮をあげながら鬼ヶ島の頂上へ飛んでいくカイドウ。赤鞘九人男とミンク族がそれを追いかける…が!
そこへ立ちふさがったのが、百獣海賊団の“大看板”ジャックと戦闘員たちだった。ともに唸るような雄叫びを上げながら交戦する。
ジャックは懸賞金10億ベリーを超える最高幹部のひとりだ。81巻で描かれたように、大勢のミンク族を相手に引けを取らない戦闘能力を持つ。国を滅ぼされたあのときのように、まさかまた敗戦してしまうのか? きっと読者は、ジャックとの戦闘シーンをハラハラしながら読み進めるだろう。そして、驚くはずだ。
そこまでだお前ら!!!
マンモスの姿で無様に倒れるジャック。大声で戦いに横やりを入れるカイドウ。“月の獅子(スーロン)”となったイヌアラシとネコマムシを前に、ジャックが敗北したのだった。
ジャックはおれが選んだウチの“大看板”!!!
大事な部下が殺されんのを黙って見てる道理はねェよな
(中略)
お前が弱ェワケはねェんだよ……!!!
あいつらが…強すぎるんだ!!!
この展開はアツイ。カイドウに「強すぎる」と言わせる、イヌアラシとネコマムシの見開きがしびれる!
だがこのあと、もっと揺さぶられるシーンが待っている。主君を手にかけた憎き男、カイドウとの戦闘だ。
おでん様の侍として!!!
もう死なせてくれ!!!
お前の首と共にな!!!
光月おでんと出会って、生まれ変わることができた9人の男たち。それぞれがおでんを主君とした、希望ある未来を描いていた。しかしオロチの陰謀とカイドウの登場で、夢が潰えるばかりか、大切な主君さえ失った。
この無念は晴らさなければならない。そのために未来へ飛んだ者、監獄に幽閉された者、憎き将軍の犬に成り下がった者…。それぞれが堪えがたきを堪えた。すべてはカイドウを討つため。侍としての矜持を胸に、命を捨てる覚悟がある。
それぞれの長く苦しい物語を経て、男たちがカイドウへ放った一撃が胸を熱くする。このワンシーンに、ワノ国編の見せ場が、またひとつ描かれたように感じた。
赤鞘九人男の戦いが大きく目立つ本作だが、このほか気になるシーンがいくつかある。まずオロチが早々に死んでしまうことだ。序盤でカイドウが用済みとばかりにオロチの首をはねてしまった。裏切りは海賊の十八番なのだが…どうにもあっさりとした死に方だ。主君を追いつめた狡猾な男が、こんな早々に退場してしまうのだろうか?
そしてカイドウの息子(のちに女性と判明)のヤマトだ。彼は光月おでんに心酔するあまり、みずから光月おでんを名乗ってしまうちょっとヤバいやつ。そんなヤマトがモモの助と出会ってしまう。
そういえば第97巻の終わりで、ヤマトがルフィに「光月おでんの航海日誌を持っている」旨の発言をしていた。航海日誌と聞けば、第5巻で首領クリークがゼフに「グランドラインの航海日誌を寄越せ」と迫ったときを思い出す。
グランドラインは大きな謎に包まれているので、そこで生き抜いた日々を書いた航海日誌が大きな価値を持つ。まして白ひげと海賊王の船に乗ったおでんの航海日誌は、喉から手が出るほど欲しい逸品だ。重大情報が記されていても不思議ではない。
一般常識で考えれば、父親の形見は息子に渡す。そう考えればヤマトはモモの助に…?でもヤマトはちょっとヤバいやつだしなぁ…。2人の出会いの続きが気になる。
ワノ国編は白熱の戦闘に入った。それと同時に、この世界を解き明かすヒントが少しずつちりばめられ、大きな謎を埋める“小さなピース”がどんどんはまっていく。年明けに偉業ともいうべき1000話を突破したワンピースは、ますます面白さが限界突破していくようで、期待に胸が膨らむばかりだ。
文=いのうえゆきひろ