マーレ襲撃が終わってもぬぐえない不信感 なぜエレンは大切な人たちを最前線に立たせたのか/アニメ「『進撃の巨人』The Final Season」第10話
公開日:2021/2/20

マーレのエルディア人収容区を襲撃したことで、エレンはパラディ島勢力にとっても危険な存在になった。知性を持つ9つの巨人のうち「進撃の巨人」「始祖の巨人」「戦鎚の巨人」の3つの能力を持つエレン。幼なじみのミカサとアルミンですら、彼が何を思って仲間たちを危険にさらし、マーレで民間人までをも殺したのか、本心を理解できないでいる。マーレがパラディ島壁内に住む人々に逆襲することは目に見えているからだ。
しかも彼は、自分たちの仲間を数多く殺した因縁のある「獣の巨人」ジークと密談しその内容を明かしていない。ジークはエレンの異母兄である。だが、マーレ側の戦士長であり思惑がわからないうちはエレン以上に危惧するべき存在だ。
一方、エレンの同期ヒストリア(以前はクリスタと名乗っていた)は調査兵団の兵士だったが、王家の血を継ぐ唯一の存在であり、アニメ3期前半でパラディ島壁内の女王となっている。
今回、「ヒィズル国」という日本に似た国の将軍の血を、ミカサが継いでいることも明らかになった。「ヒィズル国」の人のことをパラディ島勢力の軍人は「アズマビト」と呼んでいる。
ヒストリアは、「生まれのことで重い荷物を背負う者同士」とミカサに親近感を持ち、とびきりの笑顔になる。一見穏やかな場面のようだが、ヒストリアの孤独が表面化した場面でもある。
直後にヒィズル国はジークの策を明らかにした。その中の一つが、女王ヒストリアをジークの後継者、つまり獣の巨人にして、子供をたくさん産ませ、その後も王家が代々巨人を継いで外国からの襲撃に備えるという提案だ。ヒストリアは受け入れたが、それに強い抵抗感を示したのはエレンだ。巨人を継承するということは、ヒストリアがジークを食べ、いずれはヒストリアの子供がヒストリアを食べ、未来の子孫たちにもそれが受け継がれていくことを意味する。
しかし突如ヒストリアが妊娠し計画が潰れる。妊娠したヒストリアは今まで以上に暗い面持ちで、ミカサに見せた明るい笑顔はもうない。
なぜこの時期に、彼女は妊娠したのだろうか。
軍人たちはワインを飲みながら身勝手な行為だ、誰かが助言したのだと嘆く。ジークは命拾いしたわけである。
エレンたち同期は、それぞれのことを大切に思っていた。ミカサやジャン、コニー、サシャは理由を作って、エレンの巨人は自分が継ぐと名乗り出る。
だがエレンは拒否する。同期のことが他の誰よりも大事だと言い、「長生きしてほしい」と顔を赤らめて述べるのだ。
マーレ襲撃のつい2年ほど前の心温まる会話だ。
それなのに、エレンは大切な同期をマーレ襲撃の際、最前線に立たせた。異母兄ジークの計画にものった。結果、サシャが命を落としたのだ。怒りに震えるコニーは、それでもエレンを守りたいと言いつのるミカサに言い放つ。
「サシャが死んだときエレンはどうしたと思う?」
「笑いやがった。いったい何がそんなにおかしかったんだろうな。サシャが死んだことのどこが」
共に訓練したライナー、ベルトルト、アニがパラディ島壁内を襲撃した巨人だったという裏切り、ヒストリアが女王に即位し重荷を背負ったこと、そしてサシャの死と理解できないエレンの行動。同期たちは、この数年で起きた出来事により、心身ともに疲れ果てている。
同じ夜、ジークは壁外の森でリヴァイや兵士たちに囲まれていた。兵士たちが森の中でワインを飲む。そのワインの色は、ヒストリアの妊娠を嘆く場面で軍人たちが飲んでいたものとどこか似ている。
不穏さが、エンディングテーマと共に漂い始めた。
文=若林理央