Age Factory 清水英介/他がままに生かされてスピンオフ企画「僕を生かしてくれた人たち」
更新日:2021/3/19
山中拓也初著書『他がままに生かされて』の刊行を記念した特別短期連載。2月は4回にわたり、本書から抜粋したエッセイを配信してきた。 3月からは本書のスピンオフ企画「僕を生かしてくれた人たち」を本連載限定で公開!書籍に掲載しきれなかった、山中拓也の恩人たちを紹介していく。

大学生の頃に、生駒RHEBGATEというライブハウスで働いていた頃に出会ったのが英介。そのライブハウスで僕はブッキングマネージャーという、ライブに参加するバンドのスケジュールを調整する仕事をしていた。
当時の奈良のバンドシーンは、正直に言って衰えはじめていた。本気でやろうというよりは、学生時代の思い出作りのような感覚でバンドをしている人たちが多かったように思う。
そんな中で僕の琴線に触れたのがAge Factoryというバンドだった。音楽に対して真摯に取り組む姿勢が当時のどのバンドよりも強かったし、何より地元のバンドシーンを盛り上げようという気概を強く持っていた。そのバンドのボーカル&ギターが清水英介。

僕自身も奈良のバンドシーンを盛り上げたい、という考えを持っていたからブッキングマネージャーという立場を生かして、彼らが良い環境でライブが出来るように調整することもあった。
こんなことを書くとフェアじゃないとか、ひいきしていると思われるかもしれない。だけど、熱量のある人間と、そうじゃない人間が同じ機会しか与えられないのなら、それこそ僕はフェアじゃないと思う。
久々に、熱を感じる人間との出会いに僕の胸は高鳴った。「大事なイベントがあるから来てください!」と言われれば顔を出し、彼らの音楽を聴いた。それまでは同期としか語れなかったような「俺も有名になりたい!」という夢も本気で話せるような大切な仲間になっていた。
ある日、「大学に進むか、このままバンドを続けるか悩んでます。アドバイスしてくれませんか?」と英介が話しかけてきた。人生の分かれ道。そう簡単に答えを出せることじゃない。でも、そんな大切なことについて、僕にアドバイスを求めてくれている。それがすごく嬉しかった。それ以来、僕が弟みたいにかわいがってきた後輩だ。

英介は、現在奈良を拠点にバンド活動を続けている。上京するつもりはない。彼は奈良で戦うと決めたのだ。「奈良に帰ってきて、一緒に盛り上げましょうよ!」と僕を誘うくらいの強い気持ちを持っている。
彼を見ていると、自分と近い感覚を持っていると思うことが多い。自分のやりたいことは明確に持っているし、自分の人間性を打ち出すことを好む。その人間性を感じるライブをステージ上できちんと表現できる彼を見て、僕は素直にカッコいいと思う。
それでも、不安に押しつぶされそうなときには電話をかけてきて、僕の意見を求めようとするところや、崩れそうになっている瞬間を見ればすごく親近感が湧いてくる。僕と弱さを共有できるような感覚が彼に対してはずっとある。
英介は僕に対して敬語で話すし、いまだに後輩感は抜けない。それでも、音楽についてだけは後輩としてではなくて一人の人間として感想をくれる。ダサいライブをしたらダサいと言うし、カッコいいライブをすればカッコ良かったと言ってくれる。僕にも、音楽にも正直でいてくれる英介と出会えたことを今でも感謝している。
