真の悪人? それとも傑物? 身内をも滅ぼし、天下を奪った足利尊氏の度量/日本史の大事なことだけ36の漫画でわかる本②
公開日:2021/5/26


足利尊氏
足利幕府を開いた足利尊氏。そして彼を支えた弟の直義。このふたりの「キャラクター」の違いを物語るエピソードがあります。
権力者となった尊氏のもとには、どんどん贈り物が届けられる。そうしたとき尊氏は、「ありがとう、ありがとう」と気持ちよく鷹揚に受け取る。しかも、もらった品はそれ用の部屋に置いておいて、違う来客に「好きなものを持っていけ」とおおらかに与えてしまう。こうした男には、人望が集まるわけです。
いっぽうの直義は、贈り物を持ってこられても、「それでえこひいきできるか」と突き返してしまう。ある人は、返されないように庭から物を放り込んだのですが、直義は意地でも送り主を見つけ出して、返してしまった。それくらい堅い。自分が政務を見ている間は歌舞音曲を近づけなかったほど堅い男なのです。しかしそうした彼だからこそ、行政の実務能力は非常に高かった。
自然と幕府の内部に、それぞれをかつぐふたつの派閥ができるようになり、やがて対立。「観応の擾乱」として火を噴くことになります。このとき尊氏についた細川と、そのアンチの大内、山名といった構図は、足利幕府の火種となり続け、約100年後の「応仁の乱」でも、そっくりそのまま再現されることになりました。