吉祥寺の姉妹が帰ってきた! 数々の町の魅力が今、再び発掘される『それでも吉祥寺だけが住みたい街ですか?』
公開日:2021/12/6

「東京で住みたい街は?」と聞けば多くの人が「吉祥寺」と答える。グルメやショッピングも楽しめるおしゃれな街・吉祥寺は、意外と家賃もお手頃で、人気があるのもうなずける。
だがもちろん、吉祥寺以外の街にもそれぞれ異なる魅力がある。
2015年から2018年まで『ヤングマガジンサード』(講談社)で連載された『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』は、不動産屋に勤める双子の姉妹が、吉祥寺にこだわるお客さんに、いちばんふさわしい街を案内するというストーリーだ。
彼女たちの特徴は、物件を見せるだけではなく、その物件のある街を案内してくれること。実在する観光地や店も紹介され、読者もお客さんといっしょに「この街にはこんな特徴があったんだ」と驚かされる。好評を博して2016年にはテレビドラマ化もされた。
『それでも吉祥寺だけが住みたい街ですか?』(マキヒロチ/講談社)はその続編である。
大らかな双子の性格は健在で、東京のさまざまな街を深掘りしてくれる。
前作以上に「今」を感じさせる作風になっているのも興味深い。
例えば、第1話では双子もお客さんもマスクをしている。そしてお客さんは「今はほぼリモートワークだし」と言う。コロナ禍で、引っ越すときに重視するものが変わってきていることが示される。他のエピソードではDIYに憧れるお客さんも登場する。そこにも「今」の東京が背景にあることが示唆される。
引っ越しは、人生に変化を与える出来事である。だから緊張もするし「本当に引っ越していいのかな」と迷いもする。
だが双子は、きっぱりと言ってくれる。
“住みたいところに住む それが引っ越しだろう?”
本作の原点は、きっとこの台詞にある。
1巻では四つの街が登場する。日本橋浜町、高円寺、湯島、立川だ。いったいどんな特徴を持つ街なのだろうか。
各エピソードの最後には、「街ぶらラブ通信(レター)」がある。本編に登場した店の詳細がわかるので、読んだ後、興味がある店に行きやすい。
読んでいると、いつのまにか双子に案内されながら、お客さんといっしょに散策している気分になれる。引っ越す予定がなくてもいい。本作を手に、紹介された街を巡ってみるのも楽しそうだ。
文=若林理央