なぜ、ヨットは逆風でも進めるのか/身のまわりのすごい技術大百科
公開日:2022/4/15
身近なモノのしくみが図解で丸わかり!『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』(涌井良幸・涌井貞美著)で身近なモノに秘められた感動ものの技術について学びましょう。
飛行機の時代にあってもなお、水上を帆走(はんそう)するヨットには胸躍るものがある。ヨットはなぜ逆風の中でも進めるのだろうか。

大海原を航海するヨットの雄姿はロマンをかき立てる。風に大きな帆(ほ)をふくらませて走るその姿に、古来(こらい)多くの人が虜(とりこ)になった。
そんなヨットは、ディンギーとクルーザーに大別される。
ディンギーはキャビン(船室)のない小型のヨットで、1〜2人で操るのが一般的。近海でマリンレジャーを楽しむのに向いている。一方、クルーザーにはキャビンがあり、寝泊まりできる設備が付いていて、遠洋で航海を楽しむのに向いている。

ところで、ヨットは、風が吹いてさえいれば目的地に船を進められる。逆風に向かってでも進めるのだ。考えてみると不思議である。
その原理を調べるために、まず帆が風から受ける力を見てみよう。
帆が風から受ける力を簡単に理解するには、風が空気の分子の集まりと考え、その分子をテニスボールに見立てるといい。どのように風が帆にぶつかっても、帆が風から受ける力は帆の面に垂直になることが見て取れる。このことを念頭に置けば、風に対してどのような角度に帆を張ればいいか理解できる。
追い風(つまり順風)のときには、舳先(へさき)を目的方向に向け、帆を風向きに直角に張ればよい。横風のときにも、舳先を目的方向に向けるが、帆は後ろに回して風向きの斜め45度の角度にする。こうすれば、舳先の方向の力が得られるからだ。問題は向かい風(逆風)の場合である。このときは、舳先を目的方向の斜め前に向け、帆を後ろに回し、舳先の方向の力が得られるようにする。しかし、そのままでは目的地から斜めに遠ざかってしまうので、例えばタッキングという技法でジグザグ走法し、目的地に向かうようにするのだ。
実際の風は複雑であり、以上のような単純なものではない。そこがヨットのおもしろいところでもある。自分の操縦(そうじゅう)するヨットの特性と風の性質を上手に利用することで、ヨットはすばらしい水上の〝芸術品〞になるのだ。

涌井 良幸/涌井 貞美