『おしいれのぼうけん』刊行50周年記念 ご関係者様限定イベント「まっくらやみの朗読会&スペシャルトーク」を行いました。 (童心社)

文芸・カルチャー

更新日:2024/5/9

1974年の刊行から半世紀という大きな節目をむかえる絵本『おしいれのぼうけん』。
それを記念し、先日「まっくらやみの朗読会&スペシャルトーク」を開催しました。
この日のイベントには、日ごろこの本を子どもたちに手渡している書店員の方をはじめ、ご関係者の方がお集まりくださいました。

開演前、タイトルとともに会場に映し出されていたのは「まっくらやみに まけない 子どもの心のために」という言葉。
これは、私たち童心社が50周年を機に考えた合言葉です。
子どもが自分自身の力を信じることができるこの絵本を、50年先、100年先の子どもたちにつないでいきたいという思いをこめました。

今回、絵本の世界とおなじまっくらやみの空間で『おしいれのぼうけん』を朗読してくださったのは、子どものころからこの絵本が大好きだという、ピースの又吉直樹さんです。

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おしいれのぼうけん

作:ふるた たるひ たばた せいいち

みどころ

さくら保育園にはこわいものが2つあります。ひとつはおしいれで、もうひとつはねずみばあさんです。
先生たちがやる人形劇に出てくるねずみばあさんは、とてもこわくて、子どもたちは「きゃーっ」といったり、耳をふさいだりします。でも子どもたちは人形劇が大好きです。
おしいれは、給食のときやお昼寝のときにさわいで言うことをきかない子が入れられるところです。まっくらでこわくて子どもたちは泣いてしまいます。「ごめんなさい」と言っておしいれから出てくるとき、出てきた子も、おしいれに入れた先生も、ほっとします。

ある日の昼寝の時間、着替えようとしたあきらのポケットから赤いミニカーが落ちました。さとしが「かして」と言い「だめだよ」と言うあきらととりあいになって、ふたりは昼寝している子どもたちの上を走り回りました。先生が「やめなさい」と言ってもやめません。ふんづけられた子どもたちが「いたい!」と悲鳴をあげ、怒った先生はあきらをおしいれの下の段に、さとしを上の段に入れてぴしゃっと戸をしめてしまいました。
最初は泣きべそをかき腹をたてたふたりですが、なかなか「ごめんなさい」を言いません。そろっておしいれの中から戸をけとばし、汗ぐっしょりで戸を押さえる先生たちも困ってしまいます。
とうとうあきらが「ぼく、もうだめだよ」とあきらめそうになりました。さとしとあきらは上の段と下の段で、汗でべとべとの手をにぎりあい、おしいれの冒険がはじまります・・・。

1974年に発売されて以来、子どもたちの圧倒的な支持を誇り、読み継がれる本になった『おしいれのぼうけん』。
作者の古田足日さんと田畑精一さんはじっさいに保育園で取材をし、話し合いを重ねて物語を作り上げたそうです。
ほぼ鉛筆一本で描かれた世界のなかに、ねずみばあさんの存在感と子どもたちの躍動感があふれ、物語にぐぐっとひきこまれていきます。発売から何十年たってもねずみばあさんがすぐそばにいるような、子どもたちの汗がにじんだ手のひらの熱さが伝わってくるような気がする読み物絵本です。