ロバートへの愛が高じてテレビディレクターに! 推し活で人生が変わった青年に聞く、「好き」を仕事にすること《インタビュー》

エンタメ

更新日:2022/6/26

篠田直哉さん

 お笑いトリオ・ロバートと出会った時から、日々の生活はロバート一色に。ライブ会場でネタやトークをひたすらメモし、ロバートの秋山竜次さんから「メモ少年」と命名された彼は、やがてロバートへの愛を原動力に人生を切り拓いていく。

 ロバートのマネージャーになるために進学校を目指し、大学の学園祭では、実行委員としてロバート単独ライブを成功させ、ロバートの番組を制作するために新卒でテレビ局に就職。そして入社2年目にして、ロバート秋山さんの番組を制作するに至る。

 そんな全オタクの星・篠田直哉さんが、『ロバートの元ストーカーがテレビ局員になる。 ~メモ少年~』(篠田直哉/東京ニュース通信社)を上梓した。「推し」への愛、好きなことを仕事にする楽しさについて、話を伺った。

(取材・文=野本由起 撮影=川口宗道)


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「推し」ができたことで性格も一変 明るく行動的な少年に

――篠田さんは、ロバート好きが高じてテレビ局に入社し、現在はディレクターとしてロバート秋山さんの番組のほか、音楽番組などを制作しています。よく「推し活」が人生を豊かにすると言いますが、篠田さんの場合、推しへの愛によって人生まで大きく変わりました。ご自身は、推しがいることのメリットをどう捉えていますか?

篠田直哉さん(以下、篠田):僕の場合、小学5年生でロバートさんに出会うまでは暗かったのですが、そこからは行動的になりましたし、今でも仕事のモチベーションになっています。今は音楽番組を作っているんですけど、VTRを面白くするのはロバートさんがネタを面白くするのと同じ発想だと思っているので。仕事以外でも、ロバートさんの存在が何かしらのモチベーションや行動につながっていますね。

――著書を読んでいると、ロバートに出会ってからはロバートのことばかり考えてきたようです。ロバート以外のことを考える時間ってあるんですか?

篠田:子どもの頃、テレビを観ていいのは1日1時間で、だからこそ大好きなロバートさんが出演する番組ばかり観ていたんです。大学に入るために上京してからは、その縛りから解き放たれましたし、テレビ局に入社してからは他のエンタメも観たほうがいいなと思うようになりました。音楽番組を担当してからは音楽も好きになりましたし、YouTubeもいろんなチャンネルを観ていますし、恋愛リアリティ番組もめっちゃ観てます。今はロバートさん以外の番組にも興味を持って、楽しく観てますね。

――他の番組を観ている時は、ロバートのことは頭をよぎらないですか?

篠田:いや、何をしていてもロバートさんの目線は入ってきちゃいますね。変な状況になると、「コントみたいだな」って。

 今回の取材で写真を撮っていただいている時も、「タレントさんでも何でもないただの若いヤツをプロのカメラマンさんが撮るなんて、そんなことある?」って笑っちゃいました。朝もメイクさんがついてくださって、メイク道具を机にバーッと並べるんですよ。それもおかしいし、「今日はこんな取材があります」って説明を受ける時も、笑っちゃいそうになりました。「そんな状況ありえないでしょ」という時は、全部コントみたいで笑っちゃいますね。

 ロバートの秋山さんは、メンバー3人が同級生だっていうことを一番大事にされているんです。3人が同じ感覚を持っていることが、大事らしくて。なんか変なヤツがいる時に、「変なヤツいるぞ」って目線を送ると、他の2人も同じ顔してるっていうのが3人でいて一番うれしい時らしいんですよね。それと同じような感覚で、僕も何かあると「変な状況だな」「変な人がいるな」って思っちゃうんです。でも、それはディレクターとしても生きてくる感覚だなと思っていて。いろんなことが気になっちゃうセンサーを持てるのは、ロバートさんのおかげ。それはロバートさんと関係ない仕事でも生かされています。

好きなことを仕事にすると、仕事の時間もしんどくない

篠田直哉さん

――10代から20代前半の人は、「好きなことを仕事にしたい」という思いが強いように感じます。篠田さんは、まさしく好きなことを仕事にできた方ですよね。そのメリットとデメリットはどこにあると思いますか?

篠田:メリットは、基本的に好きなことをやっているので仕事の時間がしんどくないこと。ざっくりした答えですみません(笑)。僕の場合、音楽番組を観てもバラエティ番組を観ても勉強になるので、何をしていても仕事につながるんですよね。好きなことをやっていたら、最終的に仕事に生きてくるのはありがたい環境だなと思います。

――困ったこと、つらいことはありませんか?

篠田:好きなことが仕事なので、そうなってくると休まないんですよね。YouTubeを観るのも仕事だし、音楽番組を観ていても「ああ、このカット割り、面白いな」という目線で観てしまいます。なんなら編集するのも楽しいから、休みの日も「編集しようかな」となってしまうんです。心は休まりにくいですけど、体がもつうちはそれでいいかなと思ってます。

――メ~テレ(名古屋テレビ)入社2年目でディレクターになり、ご自身が企画した番組も制作しました。他の方と比べても、出世が早いほうでは?

篠田:取り立てて早いというほどでもないと思います。東京のテレビ局の事情はわかりませんが、名古屋だとそこまで珍しくないんじゃないでしょうか。

――著書にも書いてありましたが、企画書を積極的に出してきたことがロバート秋山さんとの番組制作につながりました。意欲的な姿勢が認められ、出世したのかなと思いましたが。

篠田:うーん、どうなんでしょう。メ~テレは、特にデジタル配信に関しては若手にチャンスを与えてくれる環境なんです。それに、運も良かったんでしょうね。僕はテレビが好きですが、YouTubeもめちゃくちゃ観ている世代なので、どちらの感覚も持っています。それがラッキーだったのかな、と。まだまだ勉強中ですが、テレビの作り方とYouTubeで受ける作り方、両方を掛け合わせるようにしています。

――YouTubeチャンネル「テレビ局の生活」で公開された動画「【ロバート秋山】元ストーカーがテレビ局員に。職権濫用で番組に呼ばれる」は、580万回再生を超えました(2022年6月時点)。この動画も、テレビとYouTubeの手法を掛け合わせて作ったのでしょうか。

篠田:そうですね。テレビとYouTube、両方の編集手法を混ぜています。例えば、同じ場所に視点が集中すると人間は飽きてしまって、他の動画に移ってしまいます。そこで、テレビ番組は画面の下にテロップを入れることが多いのですが、何秒かに一度、顔に重ねて画面のセンターにテロップを入れたり。その一方で、YouTubeでは言葉を詰めて間ができないようにするんですけど、お笑い芸人さんが話している間を勝手に詰めるのは失礼だと思ったので、そういった編集はしていません。そうやってYouTubeとテレビの編集をミックスしたので、あの動画は若い方もテレビ世代の方も観てくださったんですよね。

――両方の感覚をお持ちの方は、貴重なんですね。

篠田:テレビもYouTubeもやっている若手ディレクターが、多分珍しいんでしょうね。地上波のテレビもゴリゴリのYouTubeチャンネルも、両方勉強させてもらった結果、たまたまあの動画がハマったのかもしれません。

 あの動画も、再生回数はそこまで伸びないと思っていましたが、せっかく秋山さんに出演していただくので失礼のないようにしっかり作ろうと考えました。そこで、真剣にテレビとYouTubeをミックスさせて作ったので、それも多くの方に観ていただけるきっかけになったのかなと思います。

好きなものがあるなら、好きでいればいい

篠田直哉さん
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――もしロバートに出会っていなかったとしたら、どんな人生を送っていたと思いますか?

篠田:考えると怖いですね……。ロバートに出会うまでは、めちゃくちゃ暗かったので。そういう暗さは根底に残っているので、今もところどころネガティブ。「僕なんかがすみません」って常に思ってるところがあるんです。そんな僕が明るくなれたのは、ロバートさんのおかげ。ロバートさんがいなかったら、もしかしたらずっと暗いままだったかもしれません。

――好きなことを仕事にしたい人、夢を叶えたい人に向けてアドバイスはありますか?

篠田:アドバイスはないんですよ……。なぜかというと、僕の場合はほぼ運とロバートさんの優しさだけで、こうして本まで出させていただけたので。僕自身が努力したわけではないので、アドバイスできるようなことはほぼないんです。ただ、何の役にも立たないと思っていたメモ、何の役にも立たないと思っていた趣味が、仕事に生きたり人に面白いと思ってもらえたりすることもあります。ですから、好きなものがあるなら、そのまま好きでいていい。そう思っています。

 よく「ロバートを熱量にテレビ局に入るなんてすごいね」と言われますが、自分ではあまりすごいと思っていなくて。普通に目指していたら、そうなったという感じなんです。他の人と何が違うのかいまだにわからないし、どうして本になったのかもわかっていません。

――もしかしたら、篠田さん本人が本人の面白さを一番わかっていないのかもしれません(笑)。

篠田:そうなんですかね。秋山さんも帯に書いてくださいましたが、この本も「誰が読んでくれるの?」って(笑)。こんなことを言っていいのかわかりませんけど、僕もほんとに「誰が読むんだろう」って思います。

――逆に、好きなものがない人、なりたいものがなくて悩んでいる人に向けてメッセージはありますか?

篠田:なんだろう……。「ロバートを観てください」ですね。一回ロバートさんのコントを観れば絶対ハマるので。「トゥトゥトゥサークル」というコントをぜひ観てください!

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