清原果耶さんが選んだ1冊は?「どんな感情のときにも必ずどこかに導いてくれます」

あの人と本の話 and more

公開日:2023/7/13

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年8月号からの転載になります。

清原果耶さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、清原果耶さん。

(取材・文=松井美緒 写真=諸井純二)

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 清原さんは、4年ほど前に映画で詩を書く女の子を演じて以来、詩集を好んで読むようになった。

「詩ってシンプルで、読む人によっていろいろな受け取り方ができる。その余白に惹かれます」

 長田弘さんは、なかでも大好きな詩人。この詩集と出会ったのは、1年くらい前のこと。書店でタイトルに一目惚れしたのだった。

「『誰も気づかなかった』と言葉だけ聞くと寂しそう。でもきっとそれだけじゃないんだろうなと」

 その通り、長田さんの言葉選び、文字の配置、ページをめくるとき指先に伝わる感触、すべてが好み。何度も読み返す一冊となった。

「私はこの詩集を必要としていたんだと思います。本当に手に取ってよかった。生きているとどうしようもないことばかりだけど、その“どうしようもない”に理由をくれるような。どんな感情のときにも、必ずどこかに導いてくれます」

「今の私の心に一番しっくりくる」という一節を教えてくれた。

〈しかし「考える」は選択でなく決断でない。
物事は二つに一つでなく、何事も二つに一つだと考えないところから、「考える」ははじまる。〉

 そんな“今”の清原さんは、岡田将生さんとのダブル主演映画『1秒先の彼』の公開を控えている。清原さんの役どころは、何をやるにも1秒遅い大学生レイカ。

「宮藤官九郎さんの脚本は魔法みたいで。レイカのセリフは多くないのに、彼女の素直な、ちょっと抜けてる(笑)、応援したくなるようなキャラクターが感じられます」

 それを大切に、現場では山下敦弘監督とたくさん話しながら、レイカを生きた。特に好きなのは、レイカが大学の写真部の部室で一人ラジオを聴きながら(DJは故・笑福亭笑瓶さん)、鍋を食べるシーン。

「ああ、レイカはこうやって毎日暮らしているんだなと思うと、本当に愛おしくて」

 レイカも、岡田さん演じる人より1秒早いハジメも、特別ではない。ただ周囲とワンテンポ違うだけ、普通の二人だ。

「街にいたら誰も気づかない。でもそんな二人にもすごく素敵なドラマがある。自分の出演作で、これほど温かい、優しいと感じたことはあったかなと思います。頑張れって言われているわけじゃないけど、頑張れそうかもと思えるような。明日が楽しみになる、そんな映画です」

ヘアメイク:面下伸一(FACCIA) スタイリング:井阪 恵(dynamic) 衣装協力:シャツ3万800円(BAUM UND PFERDGARTEN)、パンツ6万2700円(BY MALENE BIRGER/共にS&T TEL03-4530-3240)、イヤリング2万4200円(JoueteTEL0120-10-6616)、バングル5万7200円(CASUCA PLATA/CASUCA表参道本店TEL03-5778-9168)全て税込

きよはら・かや●2002年、大阪府生まれ。15年、俳優デビュー。21年公開『護られなかった者たちへ』で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞など数々の賞を受賞。近年の主な出演映画は『まともじゃないのは君も一緒』『夏への扉-キミのいる未来へ-』『線は、僕を描く』など。『片思い世界』が24年に公開予定。

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映画『1秒先の彼』

映画『1秒先の彼』

原作:『1秒先の彼女』(チェン・ユーシュン監督) 監督:山下敦弘 脚本:宮藤官九郎 出演:岡田将生、清原果耶、荒川良々、福室莉音、片山友希 配給:ビターズ・エンド 7⽉7⽇(⾦)公開
●京都の郵便局で働くハジメは、何をするにも1秒早い。路上ミュージシャン・桜子と花火大会デートの約束をするも、目覚めるとなぜか翌日に。消えた1日の秘密を握るのは、毎日郵便局に来る、何でも1秒遅い大学生のレイカらしい。ハジメが失った大切なものとは?
(c)2023『1秒先の彼』製作委員会