岡山天音が選んだ1冊は?「上手すぎて隙がない作品。主人公のトーシローを演じてみたい」

あの人と本の話 and more

公開日:2023/12/14

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年1月号からの転載になります。

岡山天音さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、岡山天音さん。

(取材・文=松井美緒 写真=TOWA)

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 マンガ好きで知られる岡山さんが、「上手すぎて隙がない」と絶賛するのがこの作品、『フールナイト』だ。出会いは、昨年だった。

「マンガを紹介するブログでおすすめされていて。そこの作品は、だいたい僕の趣味に合うんです。まず、演出が鮮烈で惹かれました。マンガ的なアートっぽさとデッサン的な絵の技術がちょうどいいバランスです」

 そして設定の妙。

「人を植物に変える技術を開発した未来。その世界観の導入だけ見ると、オシャレなSFなのかと思うんですが、環境汚染、貧困や社会構造の歪みといった重たい問題が現れてくる。現代とも地続きで、恐ろしくもなってきます」

 ストーリー展開も斬新だ。

「1巻は親子関係の話ですが、2巻から突然連続殺人事件が描かれ始め、霊花の謎、転花技術の闇と、どんどん深いところまで掘り下げられていきます。その試みもかっこいいですよね。キャラクターもみんな素敵で、演じてみたい人がたくさんいます。そう思う作品、僕にとって本当に珍しいんです」

 誰を一番演じてみたい?

「やはり主人公のトーシローです」

 岡山さんは1月に主演映画『笑いのカイブツ』の公開を控えている。岡山さんは笑いに取り憑かれた男・ツチヤを演じながら、自分との境界線を見失っていた。

「ここまで役と共鳴することはあまりないんです。ツチヤと僕は、心が持っている性質、人間の〝核〟みたいなものが似ていたからかもしれません。人間の形を上手く保てないというか、決まった枠からはみ出してしまう。感情の通り道や心と体の構造がみんなのようにはできていない。それがふとした会話や、大勢で集まったときに露呈してしまうんですね。僕は子どもの頃からそうでした。そういう自己を守ろうというエネルギーが、ツチヤの場合は笑いに向かったのだと思います」

 でもそれは多かれ少なかれ誰もが持つ性質で、ツチヤは極端に見えるかもしれないが、観ている方も自身と重なる部分を感じられるのではないか、と岡山さんは言う。

「この作品には、自分の暗部に目を向けるというショック(笑)、別の言葉にすると面白さがありました。自分の源泉に極めて近いところを、じーっと見つめる。多分、普通はそこから目を逸らして生きていると思いますが、敢えて焦点をあてる。そういうとても鮮烈な体験でした」

ヘアメイク:森下奈央子 スタイリング:岡村春輝

おかやま・あまね●1994年、東京都生まれ。『ポエトリーエンジェル』で第32回高崎映画祭最優秀新人男優賞、18年『愛の病』でASIAN FILM FESTIVAL最優秀男優賞を受賞。近年の出演作に、『キングダム2 遥かなる大地へ』『キングダム 運命の炎』『沈黙のパレード』など。24年は『ある閉ざされた雪の山荘で』に出演。

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映画『笑いのカイブツ』

映画『笑いのカイブツ』

原作:『笑いのカイブツ』(ツチヤタカユキ/文春文庫) 監督:滝本憲吾 出演:岡⼭天⾳、⽚岡礼⼦、松本穂⾹/菅⽥将暉、仲野太賀 配給:ショウゲート、アニモプロデュース 2024年1⽉5⽇(⾦)テアトル新宿ほか全国公開●笑いに⼈⽣を捧げ、狂ったようにネタを考え続ける日々を送るツチヤタカユキ。ラジオ番組のハガキ職⼈となっていた彼は、「東京で⼀緒にお笑いやろう」と憧れの芸⼈から誘われ、東京へと向かうが……。
(c)2023「笑いのカイブツ」製作委員会