寺田心が選んだ1冊は?「目を背けてはいけない現実に直面し、命の尊さを強く感じました」

あの人と本の話 and more

公開日:2023/12/15

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年1月号からの転載になります。

寺田心さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、寺田心さん。

(取材・文=野本由起 写真=大石隼土)

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 現在、5匹の犬と暮らす寺田さん。そのうち3匹は、施設などから引き取った保護犬だという。きっかけは、一冊の絵本に出合ったことだった。

「小学生の頃、母から“こういう動物たちもいるんだよ”とこの本を紹介されました。最初は“かわいい!”と思ってペットをお迎えしても、家庭の事情で保健所に送られ、殺処分される子もいるんです。普段僕たちは動物のかわいい面だけを見ていますが、裏側にはこういう悲しい子たちもいる。目を背けてはいけない現実を突きつけられ、命の尊さを強く感じました」

 そして中学1年生の頃、寺田さんは初めて保護犬を迎え入れることに。

「何があっても最期まで見届ける覚悟で、保護犬を引き取りました。命を預かるなら、責任から逃げてはいけません。昨年、僕が生まれる前から飼っていた犬がこの世を去り、命の大切さが本当に身にしみて。いたずらされると後片付けが大変だけど、その子がいなくなったらもう片付けることもないんですよね。そう考えると、すべてが大事な思い出。小さい頃からこういう絵本を読めば、大切なことに気づけると思います」

 寺田さんの長編アニメーション映画初主演作『屋根裏のラジャー』も、大切なことを思い出させてくれる映画だ。寺田さんが演じるのは、アマンダという少女が生み出した想像上の友だちラジャー。大切な人を守るため、愛と勇気をもって戦う彼の冒険が描かれる。

「実は僕も、昔はクマのぬいぐるみのコロちゃんが友だちだったんです。小学生まではいつも一緒で、会話もしていました。そこに共感し、絶対ラジャーを演じたいと思いました」

 収録は、ちょうど声変わりの時期。そのうえ、声だけですべてを表現する難しさもあったという。

「普段のお芝居のように体や目の動きなどの視覚表現に頼れないので、ラジャーが何を考えているのか想像を声に込め、キャラクターに命を吹き込みました。息切れする場面では、実際に収録ブースの前を走ってみたりと、僕とラジャーが同じ体験をして録ったことも。収録中、僕とラジャーは一心同体でした」

 完成した映画は、寺田さんにとって思い入れの深い作品になったそう。

「人生の岐路に立つたびに必ず観返すような大切な作品になりました。心に刺さる言葉がちりばめられ、成長するにつれて忘れてしまう何かを思い出させてくれる映画です。温かな気持ちをぜひ味わってください」

ヘアメイク:奈良原友美 スタイリング:高橋由光 衣装協力:MILKBOY

てらだ・こころ●2008年、愛知県生まれ。3歳から芸能活動を開始し、これまでにNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』、連続テレビ小説『らんまん』、ドラマ『ブラックポストマン』、映画『妖怪大戦争 ガーディアンズ』『鋼の錬金術師 完結編』など数多くの作品に出演。CMやバラエティ番組でも活躍。

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映画『屋根裏のラジャー』

映画『屋根裏のラジャー』

原作:A.F.ハロルド『The Imaginary』(『ぼくが消えないうちに』こだまともこ訳・ポプラ社刊) 監督:百瀬義行 プロデューサー: 西村義明 制作:スタジオポノック 声の出演:寺田 心、鈴木梨央、安藤サクラほか 配給:東宝 12月15日(金)公開●アマンダの想像が生み出したラジャーは、彼女にしか見えない「イマジナリ(想像の友だち)」。しかし、イマジナリには避けられない運命があった。
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