永山瑛太が選んだ1冊は?「人生に答えを探そうとしなくてもいい。ねじれた自分をリセットしてくれる詩集」

あの人と本の話 and more

公開日:2024/2/13

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年3月号からの転載になります。

永山瑛太さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、永山瑛太さん。

(取材・文=野本由起 写真=TOWA)

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「ポジティブな方向に心が動いた時はページの上を、ネガティブや自虐を感じた時はページの下を折っているんです」

 折れ目だらけの文庫本は、さくらももこさんによる詩画集。

「自分がわからなくなった時にこの詩集を読むと、人生に答えを探そうとしなくてもいいやって思えて。虚勢を張っても仕方ないし、もっと気軽に生きてもいい。自分の内側にある言葉を引っ張り出してもらえた感覚になりますし、ねじれた自分を平らにリセットしてもらえるんです」

 谷川俊太郎さんとの巻末対談も、心に響いたという。

「“死んだ後はどうなるか”という対話が面白くて。さくらさんは『魂の永続性はあったほうがいいよなって思う』『もしなくなっちゃうにしても、そう信じて生きてたほうが有効な人生が送れるというかね』って。この口ぶりがもう、まるちゃんそのもので。20代前半の詩集ですけど、さくらももこさんの理論や哲学がもう出来上がってる気がしました」

 まさに永久保存版の一冊だそう。

「僕が死んだら、一緒に棺桶に入れてほしいですね。この一冊は顔の上においてもらえたら(笑)」

 そんな永山さんが『忠臣蔵』の大石内蔵助役に挑戦。とはいえ、ただの仇討ち物ではなく、吉良上野介とその弟が入れ替わる奇想天外な映画だ。吉良と弟の二役を演じるムロツヨシさんは、永山さんの親友でもある。

「ムロ君は『お芝居はこうあるべき』という考えを壊して、自由度を上げてくれる人。数年前にドラマで共演した時も、全然違う次元で芝居をしていて怖さを感じたんですね。彼とまた向き合うチャンスを逃すわけにいかないと思いました」

 ひさびさの共演で、ムロツヨシという役者の凄みを再確認したそう。

「撮影初日、吉原から朝帰りするシーンを撮ったのですが、急にクルクルッと袖を回して踊り始めたので、やっぱムロ君だなと(笑)。でも彼の凄さは、アドリブだけじゃなくて。ふたつの役をテクニックで演じ分けず、それぞれ違う精神性を感じさせるよう芝居を組み立てている。唯一無二の人だなと感じました」

 完成したのは、『忠臣蔵』のイメージを大きく裏切るコメディ。

「令和を生きる人には、悲劇よりもポップな喜劇のほうが、逆に命のありがたみが伝わる気がします。ムロ君のおかげで説得力のある映画になったと思います」

ヘアメイク:波多野香織 スタイリング:臼井 崇 衣装協力:スーツ56万1000円、シャツ15万4000円(ジョルジオ アルマーニ/ジョルジオ アルマーニ ジャパン株式会社)、他スタイリスト私物

ながやま・えいた●1982年、東京都生まれ。モデルとして活躍後、2001年にドラマ『さよなら、小津先生』で俳優デビュー。05年、『サマータイムマシン・ブルース』で映画初主演。エランドール賞新人賞など受賞歴多数。近年の主な出演作に映画『怪物』『ミステリと言う勿れ』『アンダーカレント』など。

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映画『身代わり忠臣蔵』

映画『身代わり忠臣蔵』

原作:土橋章宏『身代わり忠臣蔵』(幻冬舎文庫) 監督:河合勇人 脚本:土橋章宏 出演:ムロツヨシ、永山瑛太、川口春奈、林 遣都、北村一輝 柄本 明ほか 配給:東映 2月9日(金)公開
●江戸城内で刃傷沙汰を起こし、切腹した浅野内匠頭。だが、斬られた吉良上野介も瀕死の状態に。逃げて死んだとなれば武士の恥。そこで吉良家は、殿そっくりの弟・孝証を身代わりにして、幕府を騙そうと画策する。
(c)2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会