「自分自身の謎が解けた」と話題。公認心理師・橋本翔太さんに聞く“自分を救う心理学”とは…?〈インタビュー〉

文芸・カルチャー

PR公開日:2024/6/22

橋本翔太さん

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人がもつ“心の防衛機能”を“ナイト(騎士)くん”と名付けて、人生がうまくいかない理由をやさしく解き明かしていく書籍『わたしが「わたし」を助けに行こう ―自分を救う心理学―』(サンマーク出版)。発売直後からじわじわと版を重ねる本書を生み出した著者、公認心理師の橋本翔太さんに“わた助本”執筆のいきさつをうかがいました。

■人は生まれながらにして“自分を助ける力”を備えている

――Xなどで“わた助本”をワード検索してみると、本書を読むことで自分の心や過去の経験と向き合うことができたという声を多く目にします。

橋本翔太(以下、橋本):うれしいですね。この本でいちばん伝えたかったことは、わたしたちは自分自身で自分の生きたい人生を取り戻せるし、自分が自分のことを助ける力をもっているんだよ、というシンプルなメッセージなんです。“読んで救われた” “悩んでいた問題が解決した”とか“気づかなかった自分の本音がよくわかった”という感想をいただくと、ちゃんと受け取ってもらえていることが感じられて、2年かけて丁寧につくってよかったなと思えます。

“自分自身と仲直りできた”という言葉もいただくのですが、多くの人が自分自身のことを誤解して自分を嫌っています。実は自分のことをよくわかっていないのです。その自分への誤解を解く本でもあり、どのようにすれば自分の本当の姿を理解できるのか、一見“問題”の姿に見える、本当は頼もしい心の防衛隊をどうやって受け入れることができるのか。その方法をお伝えするのが本書の役目だと思っています。

 まずは“自分自身の謎を解く”ことが大切で、それは結果的に自分を癒すことにもつながります。なぜなら、自分が今抱えている悩みや問題は、自分自身を守る機能を兼ね備えているからなんです。今までずっと一緒に生きてきた「もうひとりの自分」とは、実は心を守る防衛反応であり、あなたの人生の味方なのです。これを本書ではナイトくんと呼んでいます。

 たとえば、自分はどうしても部屋を片付けることができないと悩む方がいたとします。するとその背景には無意識的に“片付けないほうがいい理由”があるんです。“部屋が散らかっていることに対するモヤモヤのおかげで、“自分の大きな課題を直視せずにすむ”場合もあったり、あるいは幼少期の親子関係のわだかまりを思い出すのを避けるための場合もあったりします。(人それぞれ様々な理由があります)“問題だと思っていた困りごと”は自分のことを守ってくれる味方でもあるということを、悩みを抱えている方にとって、できるだけ受け取りやすい文章で、丁寧にお伝えしたいと思いました。

橋本翔太さん

■悩み相談の動画配信では伝えきれなかったもの

――そう考えたきっかけは、YouTubeでの配信活動にもあったとお聞きしています。

橋本:公認心理師として心理療法、栄養療法、音楽療法をベースに人間関係や家族、恋愛、仕事やお金などにまつわるお悩み解決動画を配信するチャンネルを開設しているのですが、その活動を通して感じていたジレンマが、書籍制作の大きなきっかけとなりました。

 YouTube動画配信を通して痛感したのは、短時間で心にまつわる話をライトに伝えることの難しさでした。たとえば書籍は、時間をかけて深く丁寧につくりこんで、やさしく差し出すフルコースのようなもの。対するYouTube配信の場合は、今すぐ食べたい方にサッとつくってパッとお出しするランチのようなところがある。それぞれ異なる良さがあるのですが、YouTubeでの動画の場合はどうしても、核心を突く深い話をすることは難しいという葛藤を抱えてきました。

 心を扱うということは、たとえれば言葉を使って人の心に切り込みを入れていくようなものです。相手を不用意に傷つけてしまわないように、慎重に運ばなくてはなりません。いきなり核心を突きすぎてしまうと、見ていて苦しくなってしまう方がいらっしゃるかもしれません。ですから動画でお伝えするときには、言葉で揺さぶりすぎないことにも留意をしています。結果、大切なことを伝えきれないもどかしさを感じることがあります。

 ライブ配信の場合は特に、視聴してくださる方のコメントや場の空気に応じて言葉を発するライブ感も大切です。そうなるとどうしても、言葉を吟味したり洗練させる作業と並行させたりすることは難しくなります。本書に書いたような繊細で緻密な“自分が自分を助けに行く方法”をお伝えしようとすると、うまく伝わりきらない部分が出てきてしまうのです。結果、動画ではなく文章を通して、これまで伝えられなかった部分を改めて丁寧に届けたい思いに至りました。

橋本翔太さん

■本を読みつつYouTube配信も視聴すると、理解を深めやすくなる

橋本:わたしたちの悩みや困りごとは、その問題が存在している本当の理由を深いところで理解できると、見え方が大きく変わります。どうしても片付けられない自分も、ついつい食べすぎてしまう自分も、今抱えている仕事がうまくいかないことも、家族との長年の問題も、その背景には心理的な深い理由がちゃんとあります。そして自分の悩みや困りごとたちとゆっくり対話をしていくことで、ネガティブに見えていた問題に隠されていた本当の姿(問題はあなたの味方で、あなたを守ろうとしていること)や、あなた自身の力に気づくことができるのです。

 具体的には、ナイトくん(心の防衛反応)と向き合うワークという形で、問題解決法を提唱しています。「ナイトくんワーク」について書かれた章を丁寧に読んでいただけると、自分の悩みを本当の意味で解決する(問題の真意を理解し手をつなぐ)ための気づきやヒントが得られるようにつくってあります。

――YouTubeの“心理相談ライブ”では、橋本さんの穏やかな語り口やピアノの弾き語りも聴くことができますよね。書籍を読み進めつつ配信を視聴することで本書にさらに親しみがわき、「ナイトくんワーク」がよりスムーズに行えそうな気がしました。

橋本:それ、絶対にいいと思います。本書を読み進めながらYouTubeのほうものぞいていただいて、本と配信を行ったり来たりすると、理解しやすさもグッと上がるのではと思います。もし本書を読む際の大切なポイントをお伝えするとしたら、できれば初回は本書のプロローグから最後まで、一度は通しで丁寧に読んでいただくことをおすすめします。そしてよかったら何度もくり返し読んでみてください。くり返し読むことで最初は心の抵抗がゆえに腑に落ちなかった内容が、ある日ストンと理解できたりします。

橋本翔太さん

■“食べ過ぎちゃん”や“不安さん”と、二人三脚で進んでいく

――「ナイトくんワーク」では、ナイトくん(心の防衛反応)に自分で名前を付けてみることも推奨されています。実際に自分で感じた感覚に名前を付けてみると、その瞬間から勝手に擬人化されてキャラ立ちし、ふっと気持ちが軽くなるような感覚がありました。

橋本:そうなんです。究極的なことを言えば、自分の悩みや困りごとに名前を付けてみるだけでもいいんです。悩んでいる事柄に名前を付けることで、悩みごとと自分の間に少しだけ距離が出て、飲み込まれににくくなります。そして距離ができて初めて、自分の問題と向き合ってみようという心のゆとりも出てくるのです。その結果、問題の本当の姿も浮かび上がってきます。

 たとえば、“なぜわたしはいつも食べすぎてしまうのだろう”と思い悩んでいるときは、悩みと自分が一体化している状態です。それを“食べ過ぎちゃん”と名前を付けて“食べ過ぎちゃんは今、どんな気持ちなの?”と問いかけてみると、“だってね…。”と、そこから内なる対話が展開されていくわけなのです。

 すると同時に自己理解も促進されていきます。わたしを食べさせすぎる“食べ過ぎちゃん”は、本当はストレスや不安を和らげてくれていたんだ、という気づけなかった理由が判明して(各個人によって様々な理由があります)、食べ過ぎちゃんの行動に少し納得がいき、その対話のくり返しの結果、自己理解がすすみ、やみくもに食べることが徐々に減っていくのです。

――ナイトくんのことを理解しようとすることが変化をもたらすのですね。

橋本:はい。一見、問題や悩みごとの姿をしていますが、でも本当は、あなたを守ろうとしてくれている心強いナイト(騎士)のような、とても優しい存在なんです。そこに気づいてもらえたらと思っています。

“あなたはひとりぼっちではなく、あなたの中には心強い味方がいる。それは問題の姿をしているように見えるけれど、実はあなたを守ろうとする不器用なナイトくんであり、あなたはナイトくんと共に自分を助ける力をもっている”。本書に込めたメッセージをひとりでも多くのみなさまにお届けできたら幸いです。

取材・文=タニハタ マユミ、撮影=金澤正平

橋本翔太さん

【プロフィール】

橋本翔太

公認心理師 国立・埼玉大学にて音楽教育学を、同大学院にて学校臨床心理学を専修、修士課程修了。小・中・高校・特別支援学校、各教員免許状取得済み。私立中高一貫校の音楽教員を経て、公認心理師、音楽療法家となる。幼少期の難病や家族問題、東日本大震災後の不調に苦しむも乗り越え、【「心理療法」「栄養療法」「音楽療法」の3本柱】で人生と心を回復・飛躍させる【人生リノベーション】メソッド、心の改善と自己実現に特化した【コーダサプリメント】、独自の音楽療法【ピアノセラピー】シリーズを開発。大きな反響を呼ぶ。現在は、「人生リノベーション学校」を運営。登録者19万人超のYouTubeチャンネルでの“お悩み解決!心理相談ライブ”も好評を博している。著書に『聴くだけうつぬけ』『あなたの人生は食べたもので決まる』(共にフォレスト出版)、『大丈夫、あなたの心は必ず復活する』『「他人(ひと)からどう思われているか」気になったとき読む本』(共にKADOKAWA)、『弾くヒーリング ピアノセラピー(楽譜集)』(ドリーム・ミュージック・ファクトリー)など多数。

YouTubeチャンネル「心理カウンセラー【公認心理師】橋本翔太の人生リノベーション!

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